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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.10.13
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​​池部 良「ハルマヘラ・メモリー」 (中公文庫)
​  ​​​​​​塚本晋也監督の映画「野火」​を見て、いろいろ心騒ぐ印象を受けました。映画を見終えて、大阪の九条の商店街を歩きながら、まず​​
「原作、大岡昇平さんの『野火』と違うな」
​ ​​と思いました。
 つぎに、​「人肉食」​をテーマにした小説、​武田泰淳​​「ヒカリゴケ」​​野上 弥生子​​「海神丸」​を思い出しました。

 が、自宅に帰って引っ張り出したのは、​「野火」​でした。ぼくの中に残っている、昔読んだ印象では、この小説のポイントは、なんといっても、​戦場で​​
「田村一等兵は人肉を食ったのかどうか?」
​ ということでした。彼の左手が、右手がすることを制止したのかしなかったのか、それが記憶の山場でした。ところが小説を読みなおしながら、もう一つ思い浮かんできました。​​​​​​
 「確か、俳優の池部良が何か書いてたはずやなあ?」​​​

​​ そういう、遠い、あやふやな記憶のようなものでしたが、それが、今回案内する池部良「ハルマヘラ・メモリー」(中公文庫です。​​​
​え?池部良をご存知ない?」
​​ うーん、簡単にいえば「昭和」二枚目​今井正監督​​​「青い山脈」​原節子​​の相手役。​「昭和残侠伝シリーズ」​では​高倉健のダチ​で、必ず死ぬ人。晩年エッセイスト。​​
​ ぼくが若くて、映画に呆けていたころ、どなたがおっしゃったのか忘れているのがザンネンですが、​「キネマ旬報」​か何かのコラムで
「本物のヤクザ」に一番近い「目」をしている​
 ​というのがあっって、エラク納得したことがある人。でも、これも、かなり遠い記憶。​​​​​
​ もっとも、ここで案内しているのは、​映画スター池部良​ではなくて、1995「婦人公論」に連載した、​従軍記​​「ハルマヘラ・メモリー」​ということで、本の話に戻ります。​​​​​​​
​​ 僕が、北支那・保定予備役士官学校を卒業し、初めて士官として勤務に就いた隊の名称は、第三十二師団衛生隊・輜重(輸送)第二中隊。北支・山東省嶧県が隊の所在地。昭和19年・冬のこと。気温・零下五度。​​
​​ これが書き出しです。彼は1918年生まれ​だそうですから、26で中隊の見習士官として入隊したわけです。中隊に赴任して、中隊長からこんな話があります。​

 「僕も君も、大学を出た幹部候補生上がりです。山下准尉とか、ほかの下士官の人たちからみると、大学での将校って、不愉快なんじゃないでしょうか。彼らは長い間、軍隊にいて、たたき上げてきたベテランなのに、たった二年在隊したぐらいで、将校になって。そんな奴に命令されるのが嫌なんでしょうな。
 
その気持ち、わかりますけどね。制度なんだから仕方がないでしょう。きみはどうかしりませんが、ぼくはすきこのんでぐんたいにはいったんじゃありません。」
 僕だって、首根っこ、押さえられて、いやいやで軍隊に入れられたんです、と抗議しようとしたら、「でも、事情はともあれ、将校になってしまったんですから、なんとか職責を果たさなければ、まずいでしょう。軍人としても社会人としても責任を感じないわけにはいきません。ということですけど、池部君、君に中隊を任せます」と言われた。

​​​​​​​ ​なんかとんでもない話ですが、ともかくも、こうやって始まった北支での衛生隊勤務は、ベテラン下士官にいじめられ、30歳を過ぎた初年兵に気を使い、酷寒の地の冬を、ただ、ただ忍耐で過ごします。
 すると、今度は、部隊ごと、​南方への転戦​、いや前進を命じられ、上海まで列車で南下、呉淞(ウースン)から輸送船「天空丸」2500トンに乗船します。
 船に乗って、ようやく教えられた「前進」先はフィリピン。ミンダナオ島、ダバオ港。ここからが船旅で、それでも、無事マニラに到着。そこから、すでに制海権を失っているセレベス海に入ったところで、ニューギニア島の近くにある​ハルマヘラ島​行きを命じられます。航海はあと一日です。ここまで、慣れぬ船旅、船底の解雇棚の苦闘、兵への気遣いに疲労困憊の様子が延々とつづられているのですが、何故か読むのがやめられません。
 なんか、愛嬌があるのです。文章に。戦争なのに、戦争と思えない日常性。思い出話によくある「美化」があるわけではありません。どっちかというと、反省文的です。​ ​​​​
​​「二中隊、池部少尉です」と床の奥に声をかけたら、一〇燭の裸電球に、黄色く浮き出た顔が「俺、本部の主計中尉だ。上がれや」と言う。這い上がって彼の横に寝た。座っても頭が天井に支えるから、寝そべる以外に手がない。「ここにな。三〇万の包みがある。何かあって、お前、拾ったら、お前にやるよ。陸軍のものだといったって証拠がにゃあもんな。」と主計中尉はいった。​
 そのときだった。激烈な爆発音。弾かれるほどの震動。耳の穴に鉄棒を叩きこまれ、額を天井の鉄板にたたきつけられて、気を失った。​​​​

 輸送船は魚雷命中で、沈没。370ページの本編の220ページまで読み進んできて、初めて池辺地少尉が敵と遭遇した場面にたどり着きました。 
 この後、漂流する海中から運よく(?)救助され、なんとか​ハルマヘラ島​にたどり着き、今度は米軍の空襲にさらされ、食料を失い、武器は役に立たず、マラリヤにうなされ、餓死の一歩手前で敗戦の詔勅を聞きます。​ 

某日、砲兵隊から下士官が兵を三名連れてやって来た。久しぶりの他隊の兵だ。
「明日、十時、池部中尉殿は、砲兵隊本部に出頭して戴きたくあります」という。
「出頭?何の用だ?」
「はい、実は、畏くも天皇陛下の詔勅が下りまして、戦争が終わった、とのことです。その伝達だと思います。」と言って戻って行った。驚天動地。目に映るものが、みんな乳白色になって困った。もし、本当に戦争が終えられたとしたら、もう、死をも、部下の命をも考えなくても済むと思ったら、胸のつかえが消えた、と同時に、乳白色の森や兵の姿に紅色が滲んで来るのを覚えた。
 その次の瞬間、こんな、南のジャングルにまで、俺は、何をしにやって来たんだ、の思いが込み上げた。​​

 ​​池部良の従軍回想記は最後に、次の一行を記して、ここで終ります。​​
​​​​​復員船が来たのはそれから十か月後である。​​
​​ ​​大岡昇平​​「俘虜記」​と題して、復員後すぐに戦場体験を書くことで、戦後文学のスターになりました。​池部良​は戦後の映画界で、​屈指の二枚目スター​として、50年の歳月をすごしたのちに、​「愚かで無能な見習い将校姿」​を、​「戦場の自画像」​として描きました。
​​​​  スクリーンで女性客の心を掴んだ、ニヒルな笑顔が、実は、栄養失調で抜けてしまった結果の「総入れ歯」の笑いであり、​「青い山脈」​の高校生のヒーロー​金谷六郎​が、
三十歳を過ぎた復員兵の演技
​ であったことは忘れられています。​​​​
 本書は、戦場で口にすれば、生き永らえることすら難しかった​​
「本当のことば」
​ ​を、なんとしても書き残したかったに違いない気迫が、ニヒルなユーモアの中に木霊している、希代の演技者の自画像であり、ここにも、戦争の、愚かな真実が、くっきりと書き残されているとぼくは思いました。乞うご一読。

​​追記2020・01・09

​​
​​​​​映画「野火」の感想はここをクリック​してね。​​
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最終更新日  2024.08.13 09:17:26
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