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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.11.03
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​​「荒地詩集1951」(国文社) 鮎川信夫​「橋上の人」​
​​​​ ​鮎川信夫​なんて詩人の名を今では高校生も大学生も知りません。そうなんですよね、教科書にも、もう出てきません。半世紀以上前、戦争が終わったばっかりの廃墟のような大都会の片隅で、集まって詩集を作って、詩人になった人がいたのです。田村隆一、黒田三郎、鮎川信夫もそんな人たちでした。彼らが書いた詩を載せた同人雑誌が​「荒地」​で、その雑誌を本にしたのが「荒地詩集」です。その詩集が1970年ころに復刊されて、その頃予備校に通っていた浪人生が、その本のなかから気に入った何行か、白い紙に書きだして四畳半の天井に貼っていました。寝転んで、上を見ると。そこに詩のことばがありました。​​​
​​​​ 浪人生だった19歳の少年は、今、60を超えたのですが、ふと口をついて出ることばがあります。
「さよなら、太陽も海も信ずるに足りない」
​いったい、少年は、何に別れを告げたくてこんな言葉を天井に貼ったのでしょうね。あれから45年たったのですが、よく分からないのです。​​​​
​​​         「死んだ男」      鮎川信夫
たとえば霧や
あらゆる階段の跫音のなかから、遺言執行人がぼんやりと姿を現す。
──これがすべての始まりである

遠い昨日・・・・
Mよ、君は暗い酒場の椅子の上で、
歪んだ顔をもてあましたり、
手紙の封筒を裏返すようなことがあった。
「実際は、影も、形もない?」
──たしかに死にそこなってみれば、そのとおりであった
昨日のひややかな青空が
剃刀の刃にいつまでも残っている、
だが私は、時の流れのどの邊で
君を見失ったのか忘れてしまった。
黄金時代──
活字の置き換えや神様ごっこ──
「それが私たちの古い処方箋だった」と呟いて・・・・

いつも季節は秋だった、昨日も今日も、
「淋しさの中に落葉がふる」
その声は人影へ、そして街へ
黒い鉛の道を歩みつづけてきたのだった。

埋葬の日は、言葉もなく
立ち会うものもなかった、
憤激も悲哀も、不平の柔弱な椅子もなかった、
君はただ重たい靴の中に足をつつ込んで静かに横たわつたのだ。
「さよなら、太陽も海も信ずるに足りない」
Mよ、地下に眠るMよ!
君の胸の傷口は今でもまだ痛むか。
 ​​​​​​​文学研究者の証言によれば、詩の中でMよ」と呼びかけられている「死んだ男」とは作者鮎川信夫の親友森川義信森川は昭和17年ビルマの戦線で戦病死した「荒地」の詩人です。この詩はいったい何時頃書かれたのか、おそらく戦後すぐのことであったろうと思います。​「荒地詩集1951」(国文社)​に載せられています。​​​​​​​
​​​​​​ 同じ詩集の中に書かれている鮎川自身の試論の一説で、「僕たちが書いてきた詩の暗さについては、十年も前からいろんな人に指摘されつづけてきた。」「荒地」派の人々の詩風がどんな風に受け取られてきたか説明しています。

 確かに暗い。でも、この国の現代詩、特に戦後のそれは、おおむね暗くて、難解だから気にしてもしょうがないですね。
 フレーズが一つ気に入ったら、何度も繰り返して口ずさむ。詩や歌を理解する鉄則は、それしかない。そう、思い込んできました。一発でいいなと思う詩より、ある時、気になり始めた詩のほうが長持ちすると、そんなふうに詩を読んできました。
 この詩集には

「石の中に眼がある 憂愁と倦怠に閉ざされた眼がある」

​ で始まる田村隆一の詩「皇帝」もあります。いづれまた案内しようと思っているのですが、いつになることやらです。(S)​​​​​​
初稿20051​​​​​​​13改稿2019・10・30
追記2019・10・30
「荒地」派というふうに、何だか政治党派の分派のように呼ばれていたらしいのですが、僕が学生だった頃には、すでに個人詩集や、全集のようなものまであるメジャーな詩人たちでした。その頃、お世話になった思潮社「現代詩人文庫」というシリーズの一桁のラインナップに名を連ねている詩人たちでした。
 不思議なもので、ひとりで徘徊していると、ふと石の中に眼がある、か?」と口をついて出るのですが、それが誰のことばだったかわかりません。帰宅して、ネットで調べると、すぐヒットします。便利な時代になったとつくづく思いますが、繰り返し口ずさむ人は減ったかもしれませんね。
追記2022・06・16

 どなたかわかりませんが、古い投稿記事を読んでくださった方がいらっしゃることに気づいて、記事を見直すと、意味不明の文章で焦りました。
 とりあえず、修繕しましたが、荒地の詩人の詩とか、どこかで案内しようと思っていたことにも気づいて、夏までに好きな詩を投稿しようかなと思いました。その時はよろしく。
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最終更新日  2023.05.18 21:45:42
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