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カテゴリ:読書案内「社会・歴史・哲学・思想」
「100days100bookcovers no29」(29日目)
水野和夫・大澤真幸『資本主義という謎 』(NHK出版新書) 水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 ) 2度繰り返された『愛の手紙』の後をどうするか。SODEOKAさんの記事をヒントにいくつか思いついたのだが、今回はすんなりとは決められなかった。結局、『愛の手紙』とは縁もゆかりもない方へ折れ曲がることにする。 これを選ぶ「ヒント」になったのは、SODEOKAさんが、短編集の表題作『ゲイルズバーグの春を愛す』に触れたところの、 「高度資本主義への危惧」 という一節。 「「資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステム」 なのだが、 「「アフリカのグローバリゼーション」が叫ばれている現在、地理的な市場規模は最終局面に入」 り、もはや地理的なフロンティアは残されていない。また「金融・資本市場を見ても、各国の証券取引所は株式の高速取引化を進め、百万分の一秒、あるいは1億分の一秒で取引ができるようなシステム投資をして」いるのは、そうでもしなければ利潤が上げられない現状を示している。 経済成長ゼロの「定常的」な社会は可能か。可能だとしてもそれを資本主義社会と呼べるか。 ユルゲン・ハーバーマスの「近代というのは未完のプロジェクトだ」に従えば、資本主義も未完成である限りでのみ機能する。 貨幣に関する新しい理論が必要なのにない。そもそもお金が国境を越えるということが想定されていない。 企業経営者は株主の配当を増やすために雇用者報酬を削減する。 景気回復は株主のためのものであっても、雇用者のためのものではなくなった。 1990年代末にグローバリゼーションで資本は国境にとらわれることなく生産拠点を選ぶことができるようになった。 民主主義政治であったはずの政治も資本家のために法人税を引き下げ、「雇用の流動化」の名目で労働者を解雇しやすい環境を整える。 サブプライムローン等で自国民から略奪してまで利潤率を上げようとした段階で、資本は国家・国民に対する離縁状を突きつけたことになる。 若い世代の「幸福感」の所以。 成長に期待がかけられればかけられるほど、資本が前進すればするほど、雇用者は後ずさりする。「強欲」は資本主義の固有の性格だった。 資本主義における抑制と倫理は可能か。 今のシステムに未来がないとしても、今の社会に未来がないわけではない。 未来の他者。 いくらか説明はあっても経済理論的なところにはついていけていないので理解というにはほど遠いが、それでも各々が何を言わんとしているのかはわかる。 第5章の最後に、大澤が、吉田大八監督の映画『桐島、部活やめるってよ』を資本主義社会の縮図として紹介する。 そして私たちは桐島に部活や学校をやめられた生徒の立場にいるのでないかと。小説も映画も観ていない立場では大澤の説明に頼るしかないが、これも言いたいことは一応わかる。 最後に大澤が持ち出す「未来の他者」というのは、つまり「後世の人々」ということで環境問題でも同じことがよく言われる。大澤はいかに「未来の他者」をリアルに感じられるようになるかが大事だと言う。たしかに倫理的にはそのとおりかもしれないが、それがこの社会では実現できないから困っているのだと言えるわけで、どうもそのへんがピンとこない。それより、グローバロゼーションの後の世界の制度設計は政治(だけではないにしろ)の責任だとクールに言い切る水野のほうに説得力を感じないでもない。 ただ、だからと言って具体的なことがいまの時点で何か言えるわけではないのは仕方ない。 しかし、アメリカのバーニー・サンダース上院議員(大統領候補には残念ながらなれないが)やイギリスの元労働党党首ジェレミー・コービンが一定の支持を受け、注目を浴びたりと世界で左派的な政策への賛同・支持が広がっているのは確かだろう。 ただ一方、こういう危機的な時代に、アメリカの大統領がトランプだったり、ロシアがプーチンであったり、日本の首相が安倍であったり、中国が習近平であったり(以下略)というのは何と巡り合わせが悪いのかということにもなる。いや、だからこそ世界がこうなったと言えるのかもしれないけれど。 資本主義は終焉を迎えるのだろうか。 少なくとも今の資本主義のあり方は、はやく終焉してほしいと切に思う。 ここ近年の個人的生活指針は「なるべく消費をしない」ということだったのを思い出した。 遅くなりました。DEGUTIさん、次回、お願いします。 (2020・07・09T・KOBAYASI) 追記2024・02・02 100days100bookcoversChallengeの投稿記事を 100days 100bookcovers Challenge備忘録 (1日目~10日目) (11日目~20日目) (21日目~30日目) (31日目~40日目) (41日目~50日目)というかたちまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと備忘録が開きます。 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.02.06 14:24:25
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