「100days100bookcovers no30-3」(30日目その3)
戸部良一他『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(中公文庫)
山本七平『「空気」の研究』(文春文庫)
3、3冊目は『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(中公文庫)です。
有名ですので、概要は割愛します。個人的感想は、大きな事件や悲劇で責任主体を明らかにすることができても、上は責任を取らない。そのままほうっておいても人々も忘れていく。そして同じ失敗が繰り返されると思いました。
例えば、辻正信という軍人です。ノモンハン事件の責任を取るべき彼は、部下に責任を押し付け、自らの経歴に傷もつけずに南部戦線に配置転換され、マレー作戦でも実情を無視した作戦計画を立て作戦部隊を混乱させ失敗しています。
その後も参謀として派手な動きをいろいろしますが、とうとう軍組織は彼の責任を深く問わないままでした。敗戦直前に機密書類を焼却することに躍起になっている軍は、彼の責任を問えないほど、組織ぐるみでやむを得なかったと無責任を決め込むしかなかったのでしょうか。
軍略の天才とも悪魔とも言われて、未だに彼の著書は某新聞社の広告欄に大きく載っています。
4、4冊目は山本七平『「空気」の研究』(文春文庫)です。
ちなみに、戦争が泥沼化しても、もう何が何でも戦争を終わらせるという声を上げられない、もう無理だろと思っていてもその場の「空気」で反対できない、という日本社会の特徴については、この本で厳しく取り上げています。
空気のせいにして誰も反対できない。誰も責任を取らない。どうしても空気が許さないなら、スケープゴートを見つけて詰め腹を切らせて終わりにしようとしてきたのは、多くの人が見聞きし経験してきたことではないでしょうか。
しかし、「リスク社会」と言われる現在、このままのやり方でこれからもしのいでいけるのでしょうか。経済も、原発も、感染症も、基地も、顔の見えない慣例化したやり方に任せていて、ひとたび何か起きたらリスクが大きすぎて誰も責任の取りようがない。それでもこのままいくしかないという状態は不安でしかたがありません。
(ここまでが、『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』と『「空気」の研究』の紹介です。この記事「100日100カバー30日目」は「その4」に続きます。長いので分割して掲載しています。前後に関心をお持ちの方は「その1」・「その2」・「その4」をクリックしてください。)
E・DEGUTI・2020・07・14
追記2024・02・02
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