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カテゴリ:映画 イタリアの監督
フェデリコ・フェリーニ「青春群像」元町映画館 なんといっても「青春群像」と邦題が付けられているくらいですから。5人の、まあ、今考えれば「青春」というには、少々薹が立っている男たちが登場します。
1953年につくられた映画で、登場人物たちは20代の半ばを超えています。彼らが10代の後半から20代にかけて、何を経験したのか、映画には一切描かれないのですが、5人ともが、揃いもそろって定職につくわけでもなく、海辺の田舎町で、フラフラ、ウロウロしているのを、日本で言えば、昭和20年代の終わりということになる、当時の観客たちが「リアル」だと思って見たとすれば、おおむね予想がつくというものでしょう。 こうやって、写真を見ると、いかにも「ラテン系」の青年たちの顔なのですが、ぼくには、全く見分けがつきません。みんなマフィアの子分にしか見えないのです。 ところが、なかなか、どうして、映画の中では個性的なんです。一人一人の特徴を挙げれば、色男のファウスト、空想家のアルベルト、劇作家志望のレオポルド、美声のリッカルド、最年少のモラルドの5人です。 写真の正面にいるのがファウストで、その陰に小さく映っているのがモラルドだと思うのですが、ちょっと確かではありません。 あとで調べてみると原題は「I Vitelloni」で、「雄牛」という意味だそうです。映画は、まさに、さかりのついた「雄牛」そのものというべき「色男」ファウストが、モラルドの妹サンドラにちょっかいを出し、妊娠させた挙句、逃げだそうとするのですが、父親にとっちめられて結婚するというシーンから始まりました。 幸せなサンドラと問題児ファウストの結婚シーンです。そのあとの展開は、ファウストの、「播州弁」でいう所の「焼いても治らん」好色一代男話で、あんまりな結末に、サンドラの兄である悩めるナイーブ青年モラルドが汽車に乗って街を去るところで終わります。 ファウストの場所も、年齢も、社会的関係も、まあ、その他、制約になりそうなあらゆる障害をものともしない、女性に対する不埒で無節操な行動力は一見に値します。 ちょっとエルビス・プレスリーに似た顔立ちで、口説けば必ずなんとかなると考えているようで、見ていて笑うしかありません。可哀そうなのは、そんな男の子供産んで妻になっているサンドラなのですが、それが、どうも、そうでもないようなのです。 モラルドが街を去るのも、必ずしも、妹サンドラの不幸と、友人たちの無軌道に嫌気がさしたというより、どうなるかわからない、もう一つの青春を映し出していて、見ているこっち側が、ああ、あの頃から40年たったという感慨に浸ることになってしまうのでした。 なんだか、とてもバカバカしい映画であるにもかかわらず、妙に、胸に残る映画でした。 やっぱり、フェリーニはいいですね。 監督 フェデリコ・フェリーニ 原案 フェデリコ・フェリーニ エンニオ・フライアーノ トゥリオ・ピネッリ 脚本 フェデリコ・フェリーニ エンニオ・フライアーノ 撮影 オテッロ・マルテッリ 音楽 ニーノ・ロータ フランコ・インテルレンギ(モラルド) アルベルト・ソルディ(アルベルト) フランコ・ファブリーツィ(ファウスト) リカルド・フェリーニ(フェリーニの弟:リッカルド) レオポルド・トリエステ(レオポルド) レオノーラ・ルフォ(サンドラ:モラルドの妹・ファウストの妻) ジャン・ブロシャール(ファウストの父) クロード・ファレル(オルガ:アルベルトの姉) カルロ・ロマーノ(ミケーレ:雇い主) エンリコ・ビアリシオ(モラルドの父) パオラ・ボルドーニ(モラルドの母) 1953年・107分・イタリア・フランス合作 原題「I Vitelloni」(雄牛) 2020・10・26元町映画館no58 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.29 23:12:34
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