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カテゴリ:読書案内「現代の作家」
100days100bookcoversno47 (47日目)
水村美苗『日本語が亡びるとき』(筑摩書房) 『ことばの危機』で特に高校における国語教育の問題について考えさせられました。その後『田村隆一詩集』でことばについて改めてその力と危うさにハッとさせられる詩を紹介いただきました。 その時私の中に浮かんだことばは「やさしい日本語」でした。 退職後、気ままに過ごしたいという思いと裏腹に、外国人教育団体の活動とりまとめに足を突っ込んでいます。実質的な時間はそれほどではないのに、あれこれ思案することも多く、プライベートな時間の多くを奪われているように感じてしまうこともあり…。だから「100days100bookcovers」に誘っていただいたことや、ジムで体を動かす時間や、4月から始めた週3日午前中だけの事務のお仕事などは、気持ちの切り替えをするのにとっても有効で、特に本の世界に誘っていただいて、うれしく思っています。ありがとうございます。そして、今の自分のことばもシーン(場)によって違うのかなと思うようになりました。 高校の国語教師をしていた時は古文、漢文、現代文の小説や評論、またそれらの理解のために歴史や文化など、人間活動のすべてが背景にあるので、幅広い教材研究は興味深かったです。旅や遊び、お酒も食事も全部教材研究と言い訳していたくらいです。難解なことば、古典常識語についても面白く、生徒さんたちに知ってほしい、ことばから生まれる概念や感情の世界を広げて欲しいと思ったものです。 現在の生活の中では、今までの文学的(?)なことばの使い方のシーンはずいぶん減りました。事務のお仕事では、法律や経済に基づいたことばで文書を作ったり会計処理したり、慣れない中で脳トレしています。主に南米にルーツをもつこどもたちの学習支援教室では、小学校の漢字書き取りや算数の問題をわかりやすく解説したりしています。(それが難しいんだな~!)そんなさまざまなシーンの中で、冒頭に紹介した「やさしい日本語」も、私のことばの中にしっかり位置付けたいという気持ちがあります。 「やさしい日本語」とは何ぞや?と思われる方が多いと思いますので簡単に説明を…。 「やさしい日本語」の「やさしい」には、「優しい」と「易しい」の2つの意味が込められています。 書く時は、文章をわかりやすく書き、漢字にルビをふるなどの工夫があります。話す時は、ゆっくりわかりやすい言葉で話す、相手の話をゆっくり聞く、丁寧語で話すなどの工夫があります。 1995年1月に起きた阪神・淡路大震災をきっかけに、外国人の情報提供方法の1つとして「やさしい日本語」の取組みが始まりました。外国人だけではなく、子ども、高齢者、障害を持つ人など様々な人にとってもわかりやすい点で、さまざまな人に有効な伝達手段です。 (例)「土足厳禁」→ 「く つ を ぬいで ください」 長い間、むしろ漢語(熟語)を使って文章の中にたくさんの情報を込めていた私には、戸惑いがあったのですが、場によって相手によって届けるためにわたしのことばにしたいと思っています。 同時に、退職後ことばの緊張感を無くしていた私にとって、国文のみなさんとのブックリレーは実に楽しく、錆びていた部分に油をさすような感じです。(全然錆を落とせていませんが…。)映画や俳句の世界はまだまだ及ばず、みなさんのコメントを覗いて楽しんでいます。 あ、前置きが長くなりました。結局「やさしい日本語」に関するこれという本に出会えていないので、かわりに私にとって「ことば」について多くの示唆を与えてくれた水村美苗さんの『日本語が亡びるとき』を挙げます。 身体だけでなく言語の間も移動する人たち――彼女自身がその当事者であるのですが、この本の中ではそんな現実が書かれていました。 〈自分たちの言葉〉、〈外の言葉〉、日本語という〈国語〉、普遍語としての英語など、自分が使う以外の言葉にまだ意識的でなかった発行当時(2008年)でした。本の紹介は割愛しますが、日本語指導が必要な子どもたちと関わる中で、どれだけ「対話」の糸口を見いだせるのか。そしてそれらをどれだけ必要な場所に広めることができるのかが、直面する課題です。 水村美苗のようにやはり異国に住み、そこから精力的に発信しているブレィディみかこの本も最近何冊か読んでいます。パンチが効いていて、面白く読んでいます。歴史の変遷を経て多くの民族、言語が存在する台湾の作家たちも気になっています。 ではSODEOKAさん、いつも心苦しいですが、よろしくお願いします。 (N・YAMAMOTO・2020・11・03) 追記2024・03・08 100days100bookcoversChallengeの投稿記事を 100days 100bookcovers Challenge備忘録 (1日目~10日目) (11日目~20日目) (21日目~30日目) (31日目~40日目) (41日目~50日目) (51日目~60日目)) (61日目~70日目)という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと備忘録が開きます。 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.24 23:53:57
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