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井筒和幸「無頼」神戸アートヴィレッジ 1ヵ月前に予告編を見て、井筒和幸の新作ということで気になりました。見たのは「無頼」です。緊急事態だか、非常事態だかの3回目の宣言が出るらしいこともあってあわてて出かけました。
マア、ここアートビレッジで見るときはよくあることなのですが、客は数人で、ほぼ、同年配の、見かけ上男性ばかりでした。 「こんな映画、そんな若いひとが見るわけはないよな」 見る前にそう思ってすわりましたが、見終えて、もう一度そう思いました。 映画は「昭和のヤクザ」の「パッチギ」を、ええっと、「パッチギ」っていうのは頭突きのことだというのは彼の映画で覚えたのですが、 一発カマス! それが撮りたかったのでしょうね。 泉谷しげるの「春夏秋冬」という1970年代のはやり歌で、たとえば、まあ、ぼくとかが歌詞なしで歌える歌がテーマソングのように繰り返し歌われ、で、「太陽の季節」に始まる、1960年代からのはやりの映画が、その時代の「空気」の象徴のように、まあ、チンピラたちが映画館で見たり、ビデオ屋の棚をあさったりする形ですが、挿入されていきます。おしまいが「ダイ・ハード」だったことに笑いました。 そのあたりに、この監督とその作品を同世代の代弁者のように感じながら見てきて、今や、徘徊老人の日常を送っている人間には、妙に染みるものがあるのですね。 「昭和」という時代の戦前、戦中、戦後の30年がパスされて、1960年代からの後半30年が描かれている印象でしたが、井筒和幸という監督が、そのように「昭和」を描いているいるのは、1952年生まれの、彼自身の半生を映画に投影したかったという理由以外には、ぼくには考えられない映画でした。 映画の後半のシーンで、右翼の論客中野俊水という人物が「死にざまを見せる」と称してピストル自殺を遂げます。その顛末の描き方に井筒の本音が露出していることは間違いないのですが、いったい「誰」に対して「死にざま」を見せたいのか、その焦点の定まらなさが、実に現代的ではあるのですが空振りだったのではないでしょうか。 いみじくもテーマソングの「春夏秋冬」が歌っているように、本当に「季節のなくなった街」で乾ききった人間が生きる社会になってしまった現代に、映画として パッチギ一発! を、かませたかどうか、どうも、リキんだだけで、しりもちをついた印象です。 でも、まあ、ぼくにとっては、そこが井筒和幸らしくてよかったわけなのですが、キャストの一人として出ていらっしゃった、俳優隆大介さんの訃報が、今朝(2021・04・25)、ネット上に出ているのを目にし、映画を思い出して、やっぱりしみじみしてしまいました。 やっぱり「愛のある人」を井筒和幸は描こうとした映画だったと思いましたね。 監督 井筒和幸 脚本 佐野宜志 都築直飛 井筒和幸 撮影 千足陽一 照明 渡部嘉 録音 白取貢 美術 新田隆之 音楽 細井豊 主題歌 泉谷しげる キャスト 松本利夫(井藤正治) 柳ゆり菜(佳奈) 中村達也(井藤孝) 升毅(谷山)升毅 小木茂光(川野) ラサール石井(橘) 木下ほうか(中野俊秋) 三上寛 隆大介 清水伸 松角洋平 遠藤かおる 佐藤五郎 久場雄太 阿部亮平 遠藤雄弥 火野蜂三 木幡竜 清水優 田口巧輝 朝香賢徹 ペ・ジョンミョン 高橋雄祐 橋本一郎 和田聰宏 高橋洋 浜田学 駒木根隆介 松浦祐也 松尾潤 松本大志 森本のぶ 赤間麻里子 石田佳名子 西川可奈子 於保佐代子 中山晨輝 斎藤嘉樹 澤村大輔 長村航希 斉藤天鼓 芦川誠 外波山文明 2020年・146分・R15+・日本 2021・04・23-no40神戸アートヴィレッジ(no14) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.11 08:38:18
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