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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2021.09.25
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​​​​週刊 読書案内 石沢麻依「貝に続く場所にて」(講談社)​​​
  今年の夏の芥川賞李琴峰(り・ことみ)さんの「彼岸花が咲く島」(文芸春秋社)石沢麻依さん「貝に続く場所にて」(講談社)でした。​​

 お二人とも女性で、李琴峰さんは、作年、「ポラリスが降り注ぐ夜」(筑摩書房)で、新宿の夜の酒場を描いて芸術選奨文部科学大臣新人賞とかを受賞して評判になった作家ですが、今年は芥川賞ゴールインです。拍手!ですね。
​ 石沢麻衣さんは、芸術学西洋絵画の研究者で、ドイツの大学に留学中の才媛だそうです。で、その才媛が書いたこの作品の出だしはこんな風でした。​
​​​​ 人気のない駅舎の陰に立って、私は半ば顔の消えた来訪者を待ち続けていた。記憶を浚って顔の像を何とか結び合わせても、それはすぐに水のように崩れてゆく。それでも、断片を集めて輪郭の内側に押し込んで、つぎはぎの肖像を作り出す。その反服は、疼く歯を舌で探る行為と似た臆病な感覚に満ちていた。​(P003)​​​
​​ ​​いかにも、賢そうな文章です。ただ「記憶」、「肖像」、「臆病な不安」というイメージを「水のように」という直喩でまとめようという雰囲気なのですが、このパラグラフに限っても「水」のイメージでうまくまとめ切れていないために、アンビバレンツな読みにくさを作り出しているというのは、ぼくの謬見でしょうか。​​​
​​ おそらく「水のように崩れる」という表現を、小説の冒頭に持ってきたかったんだろうというのが、勝手な憶測ですが、その憶測は全編読み終えて浮かぶことで、この場面を読む限りでは「水のように崩れる」という表現が、東北の震災と深くつながっていること読み取ることは難しいのではないでしょうか。​​
 作品は、いわゆる「東北震災」をテーマにした「災後小説」というべき佳作だと思います。ただ、ちょっと嫌味を言えば、いかにも才媛らしく「頭の中で考えた世界」ことばをあてはめて描こうとする「硬さ」が目立つ作品だと思いました。
 ​あの三月以来、鳥の視点で街という肖像画を眺めるようになった。
 三年前ドイツに出発する日の朝、仙台空港から成田空港へ飛行機で移動した。機上となり窓から見下ろすと、海岸がくっきりとした線を青の中に刻み付けている。線の内側には地面の茶色の下地が広がり、そこにわずかな建物だけが点在している。素描の途中で手をとめてしまったかのようだった。以前の絵をなぞろうとして、再現できずにいる記憶の図。私の中に、その印象が浮かび上がる。海の手が暴力を振るった後を消し去ることはできず、そこは素描のための下地を整えることから始めなくてはならない。記憶を底に重ねようとしても、その投影が覆いつくすのは痛みを刻んだ別の顔。引き裂かれた時間の向こうに消えた肖像を、甦らせることはできないままだ。
 ある場所や土地を描くと、風景画ではなく肖像画になっていることがある。額縁に囲まれた土地や町の中に、「顔」が浮かび上がってくるのだ。時間の中で変化し続けてゆくものを捉え、その記憶を重ねてゆくと、街や場所の肖像画となる。様々土地から土地へ移動を繰り返すうちに、風景画と場所の肖像画の違いが次第に見て取れるようになってきた。そこには、時間の異なる視点が関わっているのかもしれない。風景に必要なものは、現象の細やかな観察や写真的な視点であり、それを見ている者と場所の現在の対話的な時間の記録となる。しかし、ある場所を見て過去を重ね、そこに繋がる人の記憶に思いを寄せる時、場所の改装という独語(モノローグ)の聞き手とならなくてはならない。その時それは、風景画ではなく場所の肖像画となるのかもしれなかった。
 失われた場所を前にした眼差しが探し求めるのは、破壊される前の土地の顔である。時間が跡を残し、記憶がしみ込んだ馴染みの深い顔。あの日以来、だれもが沿岸部を訪れるたびに、それを探し求める透過した過去への眼差しを向けている。​(P115~P116)​
​ 小説が中盤を超えたあたりの引用ですが、以前の絵をなぞろうとして、再現できずにいる記憶の図」​という記述を「頭の中に浮かんできた絵をなぞろうとして」と置き換えると、このパラグラフ全体が、彼女の作品の解説になっているようで面白いのですが、絵画の研究者の絵画論としてとても面白いと思いました。とっつきの悪い作品でしたが、この辺りまで来るとかなり読みやすくなるのも不思議です。
 いろいろ、嫌みを言いましたが、
実に誠実な自己告白小説というべき作品で、「記憶がしみ込んだ馴染みの深い顔」を探し求め、「時間」を透過することができる方法を探り、幻想小説を思わせるイメージを駆使した努力が芥川賞として評価されたことは、素直に讃えたいと思いました。


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最終更新日  2021.09.26 00:19:26
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