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カテゴリ:映画 香港・中国・台湾の監督
ソンタルジャ「巡礼の約束」元町映画館 「映画で旅する世界」という企画で見た4本目の作品です。チベット自治区の監督ソンタルジャの作品には、この企画で初めて出会いましたが「草原の河」に続いて2本目です。
前夫に死に別れ、息子ノルウ(スィチョクジャ)を実家に預けてロジェ(ヨンジョンジャ)と再婚した女性ウォマをニマソンソンという美しい女優さんが演じていて、映画の舞台であるチベット高原の東端、四川省ギャロンというところの美しい民族衣装をまとって映っている姿が印象に残りました。 映画は「美人薄命」の言葉通り、死を覚悟すべき病に侵されていることを悟ったウォマさんが、聖地ラサへの五体投地による巡礼を決意し、一人で出発するいきさつから始まります。 つい先日、この同じ企画のプログラムで「ラサへの歩き方」というチベット仏教の巡礼の映画を観たばかりということもあって、さほど驚くこともなく、 「なるほど、そうか、そうか!」という感じでしょうか、ちょっと余裕のある気分で見ていました。 女性の場合だけなのか、そこのところはよく分かりませんが、一人で「五体投地」の巡礼をする場合は、たぶんボランティアだと思うのですが、付き添いをする人もいるとか、ギャロンという土地は「ラサへの歩き方」の村よりも、もっと東にあるところで、一日に4キロから5キロぐらいしか進めないわけですから、カイラス山どころかラサまでたどり着くのに1年はかかりそうだとか、巡礼に関する知識が少しずつ増えるのがうれしくて見ていました。 ここから書くことは、ネタバレということになりそうですが、病を押して単独の巡礼行を決行したウォマさんの道中に、妻の病状を心配した夫ロルジェ、母に会いたい少年ノルウが同行しはじめ、彼女が非業の死を遂げるあたりからこの映画の輪郭が見え始めます。 ウォマさんに命がけの「巡礼」を決意させた、亡くなった前夫と交わした「約束」、死んでゆく母から、その志を引き継ぐ少年の「約束」、行半ばで倒れた妻を看取る夫のなかに生まれる新たな「約束」。 その三つの「約束」が1000キロを超える 「五体投地」の「祈り」のなかに込められていて、「なさぬ仲」の父と子の長い長い旅を支えていくというロード・ムービーがチベットの驚異的な自然の風景を横切っていく映画でした。 聖地ラサの宮殿を、峠の上から望む、旅の終わりのシーンは圧巻ですが、それにもまして、父ロルジェに散髪をしてもらう少年ノルウの告白が胸を打つラストシーンでした。 果てしない風景と時間のなかに、小さな「家族の肖像」をくっきりと描いたソンタルジャ監督に拍手! この映像なしには、この感動はあり得ないと実感させてくれるチベット高原の風景に拍手! ああ、そうだ、書き忘れていました。心の通じ合わない父と子のぎくしゃく巡礼には、実はもう一人の同行者がいます。登場のしかたは、もう、唐突としか言いようがないのですが、母親に死なれたロバの少年です。いや、まあ、動物のロバなのですが、実にいい存在感というか、役柄を演じているのです。 このロバを見ながらロベール・ブレッソンの「バルタザールどこへ」を思い出しました。当てずっぽうですが、監督のソンタルジャさんは、きっとあの映画のファンだと思いますね(笑) 監督 ソンタルジャ 製作 ヨンジョンジャ 脚本 タシダワ ソンタルジャ 撮影 ワン・ウェイホア 美術 ツェラントンドゥプ タクツェトンドゥプ 編集 ツェランワンシュク サンダクジャプ 音楽 ヤン・ヨン キャスト ヨンジョンジャ(ロルジェ:夫) ニマソンソン(ウォマ:妻) スィチョクジャ(ノルウ:少年) ジンパ(ダンダル:隣人) 2018年・109分・G・中国 原題「阿拉姜色 Ala Changso」 2021・11・05‐no104元町映画館no91 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.04 15:38:31
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