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カテゴリ:読書案内「現代の作家」
須賀敦子「遠い朝の本たち」(ちくま文庫)その2
というわけで、今日は「その2」です。 このエッセイ集の最後の文章は「ダフォディルがきんいろにはためいて・・・」という、若き日の彼女の詩との出会いを綴った美しい文章ですが、そこで、彼女はワーズ・ワースという、19世紀初頭のイギリスのロマン派詩人の「The Daffodils」という、かなり有名な詩を話題にして学生時代の思い出を語っています。 ぼくはロマン派に限らず英国の詩人なんて全く知りませんが、彼女の文章を読んでいたちょうどその日に団地の庭に咲いている水仙の花を写真に撮ってきたところで、ちょっと嬉しかったということにすぎません。 それが上の写真ですが、彼女の文章はこんな感じです。 谷や丘のずっとうえに浮かんでいる雲 ページの上に貼っている写真は、彼女が訳しているダフォディル、花全体が黄色いラッパ水仙ではなくて、いわゆる日本水仙と呼ばれる花で、そこがなんとも残念だったのですが、それでも、まあ、なんとなくな偶然がうれしくてこうして案内しているわけです。 彼女がここで思い出しているワーズ・ワースの「ダフォディル」という詩の原文はこれです。英詩のお好きな方には常識なのでしょうが、ぼくなどには難しすぎるので、岩波文庫版の訳もつけておきます。彼女の訳は、この詩の冒頭部分ですが、1950年ころの岩波文庫の田部重治(たなべしげはる)という方の訳と少し違います。何となく、彼女の性分が出ているようで面白いですね。 The Daffodils 水 仙 ここまでお読みいただいて、どうも、ごくろうさまでした。こういう詩に心がときめくという年ごろが、まあ自分にもあったことや、大学や高校の教員が学生に読ませたがる時代があったりしたことが、ぼくには懐かしいのですが、ウイリアム・ブレイクとかウイリアム・ワーズワースとか、この年になって翻訳で読み直したりしている、だって、翻訳でないと歯が立たないのですから、自分の教養のなさもまた、つくづくと感じるのでした。
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最終更新日
2024.02.16 22:32:41
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