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関なおみ「保健所の『コロナ戦記』」(光文社新書) 図書館の新刊の棚にありました。何気なく手にとってみると、目次の次のページに、こう記されていました。
プロローグ 1月23日深夜から東京は戦争状態に突入した 読まないわけにはいかない吸引力ですね。著者は関なおみさん、東京都の保健所の公衆衛生医師として勤務されている方で、コロナ騒ぎの最初から、ほぼ最前線で戦ってこられた方のようです。本書にはTOKYO2020-2021と副題があるように、2020年の1月から2021年の9月30日まで、保健所という現場で起こった出来事と、それに対する関なおみさんの感想、意見、思考が、とても早口で記録されていました。 もちろん、文章に「早口」なんてことはあり得ないわけですが、今どきはやりの「リスク・マネージメント」が通用しない非常事態が進行している中で、ダメージ・コントロールを最優先にした語りは「早口」にならざるを得ないわけで、関さんが本書を上辞されたらしい2021年の10月にも事態は進行していたわけですから、彼女の語りが最後の最後まで、次々と畳みかけてくる早口の印象を読手が持つのは当然ではないでしょうか。 たとえば、延期されていた東京オリンピック開催直前の「2021年6月 検証してみた。」の章の後半の副題をあげてみるとこうなっています。 24時間365日対応問題 で、たとえば最後の「不都合な真実」の記述内容はこうなっています。 COVID-19発生以降、様々な提言が行われる中、ついに6月18日、政府対策本部と組織委員会宛に、新型コロナウイルス感染症対策分科会専門委員会有志による「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技会開催に伴う新型コロナウイルス感染拡大リスクに関する提言」が提出された。 というわけで、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技会」の強硬開催の結果、保健所や医療現場でなにが起こったかということは7月、8月の記述に続くわけです。 ぼくが「早口」といったのはこの辺りの記述スタイルをさしていますが、読み手は「船腹に大穴をあけられ、浸水と戦っている乗務員が、もう一発砲弾が飛んでくるのを見て『早口』にならないわけにはいかないだろう」という、同情というか、共感というか、怒りというかにうながされて、「早読み」になるという利点もあるわけです。 思えば、始まりは2020年の1月だったのです。本書の記録は2021年の9月までですが、2022年4月現在、2年と4か月が経過したわけですが、次々と飛んでくる砲弾と浸水を続ける事態が終わったわけではありません。ああ、新型コロナウイルス感染症騒ぎのことですよ。 シマクマ君は、何とか無事に生きています。一応65歳を超える高齢者で、肥満、タバコの常習性がありますから感染するとかなり危険だという自己認識はあります。なるべく人と出会わないようにする以外には、特別にガードを高くする暮らしをしているわけではありませんが、まあ、とにかく今のところ無事です。 で、さなかにゴミだらけのマスクを配って人気取りをした挙句、オリンピックを強行した政治のやり方、イソジンが効くとか騒いだバカもいましたが、まあ、そういう「あほらしさ」にうんざりしたというのが正直な感想で、最近では、政治家があれこれ言うことには何の興味も関心もありません。 まあ、そういういい加減な傍観者スタイルに対して本書は結構なハードパンチでした。関なおみさんの意見に反対か賛成かとか、現場用語がわかるとか、そういうことではありません、この騒動の間中、保健所という現場には真摯に働いている人がいるという、実は、当たり前の前提に目を開いてくれたことが一番の収穫でした。 最後にあとがきで書かれている執筆動機には、ちょっと泣けましたが、彼女の結論はこんな感じでした。 いままで話したすべての観察に基づいて、こう述べなければならない。ペストに最も有効な薬は、それから逃げることだと。後世への処方箋としてここに書き残しておきたい。(以下略)納得でした。イヤ、ホント、量は多いのですがすぐ読めますよ(笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.04.25 00:05:31
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