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カテゴリ:映画 スペイン・ポルトガルの監督
ルイス・ブニュエル「哀しみのトリスターナ」元町映画館 「ルイス・ブニュエル監督特集―男と女」の4本目です。若き日のカトリーヌ・ドヌーブが、これでもかという感じで登場します。見たのは「哀しみのトリスターナ」です。これは、たしかに見た覚えがありますが、見終えて唖然としました。
「こんな、話だったんだ!?」 今回のルイス・ブニュエル特集は、この驚きの繰り返しです。どうなっているのでしょうね。40年前に、いったい、何に惹かれたのか、どの映画を観ても思い出せません。 全くの偶然ですが嵐山光三郎の「漂流怪人・きだみのる」(小学館文庫)を読んでいたこともあって、三好京三という、なんだかインチキ臭かった直木賞作家の「子育てごっこ」という話を思い出しました。 映画は義理の父親が妻の連れ子、義理の娘に肉体関係(?)、恋愛関係(?)を迫るという話でした。当人に云わせれば「愛」の表現であるようなのですが、見ているシマクマ君には、男の言動は単なる欲望でしかないわけで、まあ「めんどくさい」わけです。この「めんどくさい」男、ドン・ロペ(フェルナンド・レイ)は、貴族の末裔で、親の遺産を食いつぶしている金利生活者で、無神論者で、なぜか貧乏人にやさしい共産主義のシンパという、なんだかわけのわからない人物なのですが、なんのことはない、与えられた境遇に、無邪気にふんぞり返る「こども」の欲望の塊なのです。 そういう、社会性皆無というか、幼稚というか、傲慢というかの「欲望」の対象である境遇に、至極当然のことながら、耐えられない、義理の娘トリスターナ(カトリーヌ・ドヌーブ)は、当然、ホラシオ(フランコ・ネロ)という、若い絵描きに恋をして出ていくわけですが、やがて、片足切断という大病を患った彼女は義理の父ドン・ロペ(フェルナンド・レイ)のもとに戻ってきます。 何故そんなところに帰っていくのかというのが、たぶんこの映画を観ている人にとって当然の疑問で、ぼくも、やっぱり、そこのところに注目してしまうわけですね。まあ、そのあたりからがブニュエル映画の本領発揮という感じでした。 で、ここからは、心理劇というか、映画的というか、若きカトリーヌ・ドヌーブの演技の見せ場でした。ベッドに放り出された、まあ、不気味な義足。媚態とも憎悪ともとれるあいまいな笑顔。なごやかなホームパーティの部屋の外をコツコツと歩くホラーな足音。まあ、「ゆっくり時間をかけて、何の手も下さないで殺す」という、自滅型・ホラー・ミステリー映画の様相ですが、それぞれのシーンは、やっているのがカトリーヌ・ドヌーブですからね、なかなかの迫力で、見ごたえありました。 ボクは、何故か、この女優さんの動きには、なんとなくなどんくささを感じてしまうのですが、アップされたお顔はさすがでしたね。というわけで、カトリーヌ・ドヌーブ(トリスターナ)に拍手!の作品でした。 で、まあ、このところ見ているブニュエル映画では毎度おなじみのめんどくさい奴、フェルナンド・レイ(ドン・ロペ)には、当然、拍手!。 ついでに、やっぱり「何が言いたいの?」のルイス・ブニュエルにも拍手!でした。 監督 ルイス・ブニュエル 原作 ベニト=ペレス・ガルドス 脚本 ルイス・ブニュエル フリオ・アレハンドロ 撮影 ホセ・F・アグアーヨ 美術 エンリケ・アラルコン 音楽 クロード・デュラン キャスト カトリーヌ・ドヌーブ(トリスターナ) フェルナンド・レイ(ドン・ロペ) フランコ・ネロ(ホラシオ) ローラ・ガオス(サトゥルナ) ヘスス・フェルナンデスサトゥルノヘスス・フェルナンデス アントニオ・カサスドン・コスメアントニオ・カサス ビセンテ・ソレル神父ドン・アンブロシオビセンテ・ソレル ホセ・カルボ叔父の堂守ホセ・カルボ フェルナンド・セブリアンミキス医師フェルナンド・セブリアン 1970年・100分・G・スペイン・フランス・イタリア合作 原題「Tristana」 日本初公開:1971年1月 2022・05・25-no73・元町映画館no126 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.21 23:56:28
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