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カテゴリ:読書案内「映画館で出会った本」
侯孝賢「侯孝賢の映画講義」(みすず書房)(卓伯棠編・秋山珠子訳) 「侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の映画講義」(みすず書房)という本が市民図書館の新刊の棚に転がっていて、読み始めてはまりました。記事の最後に、経歴とかを写しましたが、実は、ただの1本の作品も見たことのない人なのですが、その彼が、2007年に香港バプテスト大学で行った講義の書籍化である本書を読みながら、見たくて見たくてたまらない映画監督の一人になりました。
映画を志す大学生たちに対する、実作者でもある監督による講義です。全部で6講ありますが、講義のあとでの、学生たちとの質疑応答も含めて書籍化されています。まあ、こんな目次です。 目次 第1講は、本人による自伝的な自己紹介ですが、第2講からは映画の実作についての現場的な発言満載です。もっとも、内容にあれこれ言うことができるほど、侯孝賢監督についても、彼の作品についても、また、80年代から2000年代にかけての台湾映画、香港映画、中国映画についても、「全く知らない」わけですから、「面白かった」というしかないのですが、記憶に残った講義を一つだけ紹介してみたいと思います。 写実についての私の考えはこうです。写実とは再創造された真実である。それは現実における真実と同等のものであり、一つの独立した存在である、と。カルビーノは小説の形式を論じたとき、小説の深度について次のように語っています。小説の深度は表面に表れ、それは潜在している、と。表面に表れるのはテキストであり、私達はそのテキストの構造を通じて、そこに透けて見えるかすかな手がかりから、言葉では伝えられず、名指しようもなく、出来事のなかに身をおいて初めて理解しうるものを感得するのです。 いかがでしょうか、ここで話題になっている「晩春」は、言わずと知れた、小津映画の傑作のひとつで、笠智衆と原節子の父娘映画の始まりのような作品ですが、映像に対する侯孝賢監督のシャープな論旨に唸りました。 知っている映画をネタにした話も、、全く知らない台湾映画や香港のスターを話題にした話もありますが、話として聞かせるのがすばらしいですね。その時代の台湾映画や香港映画のファンの方にはきっと楽しい話題満載だと思います。コロナで、ごろごろせざる得ない日々でしたが、なかなか刺激的な読書でした。みなさまも、是非、どうぞ。 侯孝賢 追記 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.03.23 22:11:40
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