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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
ラッセ・ハルストレム「ギルバート・グレイプ」元町映画館 「12ヶ月のシネマリレー」という特集が元町映画館で始まっています。第1回がラッセ・ハルストレム監督の「ギルバート・グレイプ」という作品でした。1993年ですから、30年前の名画だそうです。もちろんシマクマ君は、何にも知らずに、ただ、ただ、30年間の映画体験の空白を埋めたい一心でやってきました。 アメリカの西部、中西部(?)、アイオワ州のエンドーラという田舎町で暮らしているグレイプさんという一家、シングルマザーで、長女が、家族の家事一般を請け負っているらしいエイミー(ローラ・ハリントン)。長男が食料品店に勤めるギルバート(ジョニー・デップ)。次男が18歳の誕生日を迎える直前のアーニー(レオナルド・ディカプリオ)で、末娘の二女が高校生のエレン(メアリー・ケイト・シェルハート)という5人家族のお話でした。(原作では、もう一人、年長の、ホントは長男もいるようですが、映画では気づきませんでした。)
この家族には父親がいませんが、数年前に「何にも云わない人が、何にも云わないまま、ある日、家の床下、倉庫になっている地下室で首をくくっていた」ということが語られます。 突然の夫の死にショックを受けた母、ボニー・グレイプ(ダーレン・ケイツ)は、夫の亡くなったその日から食べ続けて、ギルバートの言葉を借りれば、今や、巨大な「シロナガスクジラ」のようになっています。長女のエイミーが家事一切を取り仕切っているのはそういうわけです。 一見、「普通」の、この家族が、「普通」ではないと印象付ける要素はもう一つあります。次男のアーニーが、放っておくとやたら高いところに登りたがる上に、社会生活はもちろんのこと、日常生活、たとえば、風呂に入るとか、食事をするとかを家族の介護なしにはできない上に、言語生活もままならない、「普通」ではない少年だということです。 映画は、家族を支えて働き、弟アーニーの面倒を見て暮らしている青年、ギルバート・グレイプの前に、トレーラー暮らしのベッキー(ジュリエット・ルイス)という、少女と呼ぶほうがピッタリの女性が現れることで動き始めました。 ギルバートとベッキーが知りあい、二人で言葉を交わし合うようになった映画の中頃です。 「何も言わない人だった。」と自殺した父のことを語るいうギルバートに、「そういう人知ってる」と答えるベッキーの言葉と、「なにがしたいの?」と問いかけるベッキーに「いい人になりたい」と答えたギルバートの言葉に、それぞれ、言葉が出てきた、その瞬間、ドキッとしました。 「ああ、これは、そういう映画なんだ!」 原題が「What's Eating Gilbert Grape」で、訳せば「なにを食べているの、ギルバート・グレイプ?」でしょうか。 日常生活の中の、何気ない言葉だと思うのですが、登場する人物たちが、それぞれ「普通」ではない、何かを抱えて暮らしているさまを描きながら、何の疑いもなく「普通」に埋没し、過食とか障害という言葉を、本当は好奇の目で見ながら、平気で平等を口にしている、ぼくたち自身の「普通」の生活を、この題もまた、鋭角に切り裂いたことばだと感じました。 それにしても「いい人になりたい」というギルバートのなにげない言葉の深さは並大抵ではないと思いました。この一言でこの作品は記憶に残るでしょうね(笑)。 アーニーを演じているのが、若き日のレオナルド・ディカプリオだということは、さすがのボクでも、驚きながらも、気づきましたが、ギルバートが、あのジョニー・デップだったことに、エンド・ロールで気づいてびっくり仰天でした。見終えて、受付のおねーさんにそのことをいうと「ええー、それも知らずに見ていたんですか?」と驚かれましたが、そうなんですね。何にも知らずに見ていたのです。でも、そのせいで、単純な発見の驚きもあるわけで、映画館徘徊は、やっぱりいいですね。 ちょっというのは恥ずかしいのですが、デカプリオの演じるアーニーの最初の所作から涙が止まらなくなって、ラスト・シーンで、ギルバートと再会して飛びつくベッキーの姿まで、泣きっぱなしでした。いやはや、年を取ったものですね。 それにしても、グレイプ家の家族のみなさん、ベッキーとおばーちゃん、ギルバートに齧りつく、なんだか哀しいカマキリ夫人のベティ(メアリー・スティーンバージェン)さん、皆さんに拍手!でした。 見たことのないいい映画というのが、まだまだ、山のようにあることを実感しました。やっぱり、出かけないと話になりませんね(笑)。 「12ヶ月のシネマリレー」というこのシリーズ、1年がかりのようですが、頑張って完走できたらいいなと、久しぶりに前向きの気持ちになった11月の月曜日でした。 監督 ラッセ・ハルストレム 原作 ピーター・ヘッジズ 脚本 ピーター・ヘッジズ 撮影 スベン・ニクビスト 美術 バーント・カプラ 編集 アンドリュー・モンドシェイン 音楽 アラン・パーカー ビョルン・イシュファルト キャスト ジョニー・デップ(ギルバート・グレイプ) レオナルド・ディカプリオ(アーニー・グレイプ:弟) ダーレン・ケイツ(ボニー・グレイプ・母) ローラ・ハリントン(エイミー・グレイプ:姉) メアリー・ケイト・シェルハート(エレン・グレイプ:妹) ジュリエット・ルイス(ベッキー:祖母とトレーラー暮らしの少女) メアリー・スティーンバージェン(ベティ・カーヴァー) ケビン・タイ(ケン・カーヴァー:ベティの夫・保険屋) ジョン・C・ライリー(タッカー:友人) クリスピン・グローバー(ボビー・マクバーニー:友人・葬儀屋) 1993年・117分・アメリカ 原題「What's Eating Gilbert Grape」 日本初公開1994年8月20日 2022・11・21-no129・元町映画館no149 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.06.30 22:10:45
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