|
井上雄彦「THE FIRST SLAM DUNK」109ハット 我が家で暮らしたゆかいな仲間たちが、もし、今、集まって人気投票をすると、おそらくダントツトップ間違いなしのマンガ家は井上雄彦で、作品はスラムダンクが僅差でバカボンドーを制するだろうシマクマ君は考えるのですが、そのスラムダンクが20年ぶりに映画館に帰ってくる、その上、監督を井上雄彦自身がつとめると知って
「これは見なあかんやつやな。」 とか思っていると、封切り直後、さっそく 「見たで!ワールドカップの決勝と同じくらいハラハラドキドキで疲れるで。」とピーチ姫から報告が入りました。 「もちろん行くで!」まあ、こういうのやり取りがあって、やってきたのが109シネマズハットです。冬休みに入ってしまったので、混みあっていることを覚悟してきましたが杞憂でした。ほんと、ここはいい映画館です(笑)。 原作の「SLAM DUNK」はジャンプ・コミックスで繰り返し読みましたが、もう、10数年昔のことです。桜木花道と流川楓という二人の天才のビルドゥングス・ロマンといっていいと思いますが、不良少年だった(まあ、桜木くんも超弩級の不良少年だったのですが)三井くんが、コートに戻ってきて、安西先生に言う、 「バスケがやりたいんです。」 こんなことばシーンや、バスケットボールはド素人の花道くんが 「左手はソエルだけ。」 と、ぶつぶつ念じながら誰もいないコートでシュート練習をするシーンは(ああ、もちろんマンガのですよ)、今でもありありと思い浮かんでくる傑作マンガです。 当然、今回も、そういう名場面、名(?)、迷(?)セリフを期待して座ったわけですが、なんと主役は宮城リョータくんでした。そういえば、湘北高校のコートにやってくる以前の彼については、原作マンガには描かれていません。 ちなみにこの方が「リョウチン」こと、宮城リョータくんです。高校2年生です。 こちらが彼の回想に出てくる中1の頃のリョータくんです。沖縄の少年でした。 映画は奇跡的にインターハイ出場を果たした神奈川県立湘北高校が、2回戦で不敗の名門、山王工業と対戦する原作マンガのクライマックスを描いています。違うのは、試合展開をポイント・ガードのリョータくんの目で見せて描いているところです。同じ物語を別の角度のカメラで撮ればどうなるかというアイデアに唸りました。さすがですね。 最初のシーンが終わって、タイトルが出てくるシーンに、まず、涙でした。五人の主役たちが、一人、一人、黒ペンの作画ラインで描き出されていく過程が画面にあらわれていって、最後に湘北高校の赤いユニフォームで色付けされるのですが、 「元気やったかね、君たち!」 懐かしさが、画面の中で出来上がっていく絵とともにこみあげてきて、68歳の老人の涙腺はダダ洩れ状態でしたが、そこから約2時間、知ってはいるものの、圧倒的な苦闘の連続の中で、ぽつりぽつりとファンならだれでもが知っている名セリフがあって、挙句、あと5秒という最後の最後、敵のゴール下でボールを持った流川楓の眼差しがチラッと花道を見て、すごいパスを受け取った桜木花道のボールを構えた瞬間のつぶやきに息をするのを忘れて目を瞠りました。マンガを知らない人には全く分からないことを書いていますが、ファンなら誰でもわかる話なのです。どうせ繰り返し読んでいるに違いないのですから。(笑) 映画の中では,この決定的なシーンの花道くんのつぶやきは声にはなりませんが、ぼくは知っています。 「左手はソエルだけ!」 リョータくんの重い過去と現在の葛藤が挿入された結果、宮城リョータくんにとっての山王戦という新しいスラムダンクが出来上がっていて、これだけ、スポーツの中の身体の動きの描写に、卓越したリアルな描画力をもつ井上雄彦が、やはり、作品全体としては人間が描きたいのだということが、素直に伝わって来て、感動でした。何はともあれ拍手!拍手!でしたね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.01.08 22:13:38
コメント(0) | コメントを書く
[映画 日本の監督 ア行・カ行・サ行 是枝・黒沢] カテゴリの最新記事
|