フランク・ダラボン「ショーシャンクの空に」パルシネマ 噂だけは知っていて、ずっと見たいと思っていた作品です。たぶんテレビ上映でも見たことがない作品です。パルシネマの年末2本立ての1本で見ました。フランク・ダラボン監督の「ショーシャンクの空に」です。
見終えた後で、まあ、いつものことですが、チッチキ夫人に、得意のネタバラシをしようとすると、いきなり言い返されてしまいました。
「アンナ、今日、ええ俳優見たで。ショーシャンクいう映画な。」
「ミス・デイジーの人やろ、ええっと、モーガン・フリーマン、それと銀行員の若い囚人が頑張るやんね。」
「ええー。知ってんの?」
「テレビで何度もやってるわよ。」
うーん、皆さんご存知の作品らしいですね。チラシには「死ぬまでに見るべき映画50選」と銘うっています。1994年のアメリカ映画です。
ああ、すごい!と思ったシーンがいくつかありました。その中で、一番は、刑務所内放送を使って元銀行員のアンディ(ティム・ロビンス)がモーツアルトの「フィガロの結婚」を流すシーンです。音楽が流れ、庭というか広場というかにおおぜいたむろしていた囚人たちが空を見上げます。それが、誰のなんという曲なのか、おそらく空を見上げている囚人たちの多くは知らないでしょう。しかし、音楽が、たしかに流れていることに囚人たちは反応しています。ドキドキしました。このシーンこそがこの作品の最高のシーンだったと思います。
その後、懲罰房から戻ってきたアンディがレッド(モーガン・フリーマン)に「音楽は希望だ!」と言い、ハーモニカを贈ります。しかし、期待に反して、レッドはハーモニカを吹こうとはしません。おそらく、レッドは万が一にも、自分が希望を持つことを恐れていたに違いありません。
しかし、ハーモニカはそれで終わりではありませんでした。40年の刑務所暮らしの結果、仮出獄を認められたレッドが、アンディとの約束の場所に向かうシーンのBGMに、ほんの少しだけ、か細く、静かにハーモニカの音が響きます。その音色を聴きながら、「どうか、アンディと再会できますように!」と祈ったのはもちろんですが、自由と希望を信じきれない老人を演じる、まだ、50代だったはずのモーガン・フリーマンの演技に唸りました。
看守や所長役の俳優たちの悪役ぶりも拍手!ですが、終身刑のレッドとアンディの「友情」の清々しさが胸に残り傑作でした。監督のフランク・ダラボンに拍手!ですね。
モーガン・フリーマンという俳優の、多分、映画俳優としては始まりに近い作品「ドライビング・MISS・デイジー」(1989年)と「ショーシャンクの空に」(1994年)の2本を立て続けに見ました。
それぞれ、神戸の地震があったころの封切り映画で、ぼく自身が映画館からもビデオからも離れていった時期の作品です。
「あの頃に、この2本を見ていたら、映画館通いを続けていたかもしれないな。」
ふと、そんなふうに思う作品でした。少なくとも、モーガン・フリーマンの作品は追っかけていた可能性は高いでしょうね。
顔というか表情というか、そこに表れる内面の微妙な落差を演じ分けていることをハッと気づかせる演技は、何とも言えない味わいがありますね。当分、彼の名前を見つけた作品は追っかけるほかなさそうです(笑)。
マア、蛇足ですが、「The Shawshank Redemption」という現代のほうが、ずっとしゃれてますね。名作の誉れ高い、こんな作品にそんなケチをつけても仕方がないですがね(笑)。
監督 フランク・ダラボン
原作 スティーブン・キング
脚本 フランク・ダラボン
撮影 ロジャー・ディーキンス
美術 テレンス・マーシュ
編集 リチャード・フランシス=ブルース
音楽 トーマス・ニューマン
キャスト
ティム・ロビンス(アンディ・デュフレーン 終身刑)
モーガン・フリーマン(エリス・ボイド・“レッド”・レディング 調達屋・終身刑)
ボブ・ガントン(サミュエル・ノートン 所長)
ウィリアム・サドラー(ヘイウッド 囚人)
クランシー・ブラウン(バイロン・ハドリー刑務官)
ギル・ベローズ(トミー・ウィリアムズ 囚人 強盗 懲役3年)
ジェームズ・ホイットモア(ブルックス・ヘイトレン 終身刑 図書館係)
1994年・142分・G・アメリカ
原題「The Shawshank Redemption」
日本初公開1995年6月3日
2022・12・27-no145・パルシネマno51