セルゲイ・ボンダルチュク「戦争と平和 第4部(1967)」元町映画館 今日は2023年1月13日の金曜日です。元町映画館がお正月番組で上映していたセルゲイ・ボンダルチュク生誕100周年記念特集の最終日です。見たのは「戦争と平和 第4部(1967)ピエール」と「ワーテルロー」の二本です。
まずは第1部で期待外れだった「戦争と平和」第4部です。第2部、第3部は、第1部がちょっと期待外れだったことと、まあ、それ以外にも、あれこれの都合もあって見ませんでしたが、第4部は、ナポレオンの敗走が見たくて、やってきました。
第1部のクライマックスだった、1805年のアウステルリッツの三帝会戦に勝利したナポレオンは、その7年後、1812年、ついにロシア遠征に踏み切ります。
この戦争は、絶対的な軍事力を誇るナポレオン軍に対して、ロシアの老将クトゥーゾフ将軍が、捨て身ともいえるモスクワ明け渡し作戦で応じ、モスクワを占領したナポレオン軍は空っぽのモスクワを焼き払うという前代未聞の報復作戦で応じますが、食料補給をはじめとした兵站に苦しんだうえに、冬将軍による追い打ちが重なり、武力制圧を維持できなくなって敗走するというあの戦いです。
この第4部を「やっぱり、見よう」とやって来たのは、そのあたりがどう描かれているかという興味でした。登場人物たちによる物語の展開は、第1部と同様、アンドレイ、ピエール、ナターシャという三人の人物に焦点が当てられていますが、フランス軍の略奪や放火、燃え上がるモスクワ、占領地での、でっち上げによる放火犯の処刑といった描写が、なかなかリアルで、第1部に比べていえば、格段に面白かったですね。
で、自分なりに気づいたことですが、結局、ボクがかったるいと感じていたのは、トルストイ的なヒューマニズムとか宗教性を、映画はテーマをして描かざるを得ないわけですし、ナレーションも含めて、至極まっとうな戦争批判が語られるのは、ある意味当然なのですが、そこの所だったようです。
戦争そのものを描いた、悲惨なスペクタクルにはとても興味を惹かれたのですが、個々の登場人物たちの内面を描いた、多分、美しい描写には欠伸が出てしまう(まあ、大げさに言えばですが)わけで、自分自身の人間性に疑いを感じる鑑賞でした(笑)
整理がつかないまま、こうして書いていますが、まあ、個人的な問題に過ぎないのかもしれませんが、この映画や、おそらく、原作の小説が描いている、「堂々とした、まっとうな人間観」にたじろいだり、しらけたりしてしまうのは何故かという問題が、少なくともボクの中にはあるようです。
マア、ゆっくり考えればいいことかもしれません。老いたりと言えども、人の中で生きているわけで、生きていくうえで、ちょっと考え込んでしまいますね(笑)。
監督 セルゲイ・ボンダルチュク
製作 セルゲイ・ボンダルチュク
原作 レオ・トルストイ
脚本 セルゲイ・ボンダルチュク ワシリー・ソロビヨフ
撮影 アナトリー・ペトリツキー
アレクサンドル・シェレンコフ
イオランダ・チェン・ユーラン
美術 ミハイル・ボグダノフ ゲンナジー・ミャスニコフ
編集 タチアナ・リハチェワ
音楽 バチェスラフ・オフチンニコフ
リュドミラ・サベリーエワ(ナターシャ)
ビャチェスラフ・チーホノフ(アンドレイ)
セルゲイ・ボンダルチュク(ピエール)
1967年・97分・ソ連
2023・01・13-no02・元町映画館no156