香港ドキュメンタリー映画工作者「理大囲城」元町映画館 「時代革命」と名付けられた香港の民主化運動の記録映画を、何とか見続けています。本作は2019年の香港民主化デモの中で起きた香港理工大学包囲事件を大学内部から記録したドキュメンタリーで、映像に映っている人物はもちろんですが、撮影者もすべて匿名で、もちろん中国や香港では上映禁止であろうフィルムです。元町映画館で1月28日から1週間限定上映です。
観た映画は「理大囲城」、英題は「Inside the Red Brick Wall」でした。
圧倒的なK察権力、いや、国家権力の前に、完膚なきまでに敗北していく香港の少年少女たちの姿が克明に記録されていました。「民主化」を求める少年たちを「暴徒」と名付けることによって、暴力を行使することに何の躊躇いもなくなった国家権力の前に、「民主化」の叫びがいかに無力であるかということを思い知らされるかの映像でしたが、果たしてそうでしょうか。
この映画は、敗者の手によって撮影され、映画化され、世界に向けて配信されています。映画のなかでも、権力による際限のない暴力の行使がSNSによって拡散されている様子が映し出されますが、ボクたちが忘れてはならない大切なことの一つがそこにあると思いました。
世界の片隅で暴力によって圧殺されてきた民主化の戦いは、おそらく数えきれないほどあるでしょう。そこでは真実を伝えることも、また、封殺されているのが現実なのだと思います。この映画には真実が記録されているとぼくは思いました。そして、その真実が何を語っているのか、という問いを突き付けている作品だと思いました。 ここ数年にわたって、観つづけてきた香港の民主化運動のドキュメントや戦いの場をテーマにしたドラマは、何よりも、まず、現代中国の真相を暴いていました。眼を覆いたくなるような全体主義の暴力が鮮やかに記録されていました。覇権国家中国を想定して、なし崩しの再軍備、軍拡を正当化する映像として、格好のフィルムと言えないわけではありません。しかし、忘れてはならないことは、そこには民主化を闘い続ける若者がいて、その真実を、文字通り、身を挺して伝えようとしている映画製作者がいるということではないでしょうか。
浅はかな隣国ヘイトを口にしながら憲法9条を戦後民主主義の小児病として笑うことがリアルポリティクスであるかの風潮が、世を覆っていますが、そういう愚かな発想をこそ撃つフィルムだとぼくは思いました。
カメラを回し続け、映画として配信した香港ドキュメンタリー映画工作者の皆さんに拍手!でした。
いや、それにしても、疲れました(笑)。
監督 香港ドキュメンタリー映画工作者
2020年・88分・香港
原題「理大囲城」「Inside the Red Brick Wall」 2023・01・31-no014・元町映画館no160