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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2023.02.11
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松浦理英子「ヒカリ文集」(講談社)​​ ネットで検索していると、朝日新聞「好書好日」という文芸欄に松浦理英子の最新作「ひかり文集」(講談社)について、作者のこんな言葉が載っていました。​​​
​ 身近で「心を使わない人」に会ったことが構想のきっかけ。巨大アイドルグループをテレビで見かけても「心を使わない人」が気になる。「腹黒」「あざとい」と言われながら慕われている。「複雑で興味深く、いろいろ書きようがあると思いました。肯定的に描ければとても魅力的になる、と」​
​​ 「こころを使わない人」を書いたということでしょうか。​
​​​​​​​​​​​​​​ 東北の被災地にヒカリという女性を捜しに出掛けて、当地で客死した破月悠高という中年の戯曲作家で演出家が残した未完成の戯曲の主人公(?)である賀集ヒカリという,行方が分からなくなった女性をめぐって、かつて、破月悠高が主催していた学生劇団のメンバー、看板俳優だった鷹野裕、レズビアンの飛方雪実、今は既婚者の小滝朝奈、悠高の妻真岡久代、団員の中で一番若かった男優秋谷優也が、それぞれ手記を書くことで「ヒカリ文集」という私家版の冊子ができあがったという、まあ、わざとらしいといえば思いっきりわざとらしい体裁で、松浦理英子の最新作「ヒカリ文集」は出来上がっています。​​​​​​​​​​​​​​
​​​​​ 作家「こころを使わない人」として描いているらしいヒカリという女性が、すでに亡くなった破月悠高をはじめ、手記を書いている全員と、いわゆる肉体関係を結び、その全員に、偽りのない「愛」の対象として記憶されていることが、どこか不自然で、異様な人間関係、ゆがんだ記憶だとぼくには感じられたのですが、作品は2022年野間文芸賞として評価されているようです。​​​​​
​​ 「親指Pの修業時代 上・下」(河出文庫)、「犬身 上・下」(河出文庫)と、いわば奇形の「愛のかたち」を書き続けてきた作家によって、新たな「奇形の愛」が描かれたということでしょうか。​​
​ ノーベル賞カズオ・イシグロクローン「愛のかたち」を描いた「わたしを離さないで」 (ハヤカワepi文庫)が話題になったことがありますが、ああ、この作品の登場人物ヒカリは人間ですが、今の流行りでいえばAI、人工知能ロボットによる「愛のかたち」をふと思い浮かべさせる読後感でした。​
 それほど出来がいい作品とは思いませんが、なんとなく、世界の底が抜け始めているような印象は残りました。
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最終更新日  2023.02.11 10:15:08
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