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瀬々敬久「ラーゲリより愛を込めて」109シネマズハット お友達に誘われて観ました。さそわれなかったら見なかった作品ですが、見てよかったというのが正直な感想です。
観たのは瀬々敬久監督の「ラーゲリより愛を込めて」でした。「ラーゲリ」というカタカナ言葉を聞いて、「スターリン体制下のソビエトの収容所」のことだと、すぐにピンとくる人というのは、今時いらっしゃるのでしょうか。 ぼくたちの世代は、まあ、人それぞれですが、内村剛介『生き急ぐ スターリン獄の日本人』(三省堂新書)、石原吉郎「望郷と海」(ちくま文庫)、高杉一郎「極光の陰に」(岩波文庫)などなどが、学生時代に本屋に並んでいたことや、たとえば、ぼくであれば母方の伯父が体験者であったりしたわけで、「ラーゲリ」と聞いただけで、「ああ、あのことか」と気づくわけですが、予告編を見ながらも、見てみようかという気はおきませんでした。 なぜ、今、「シベリア抑留」を映画にするのかという疑問を感じていたからです。 「シベリア抑留」といえば、スターリン体制下のソビエト社会主義連邦という国家が、満州、朝鮮半島、サハリンの日本兵や在留邦人を60万人ちかくも捕虜にしたうえで、自国の軍法会議によって終身刑を言い渡し、10年以上もの間、犯罪者として収容所での強制労働を課し、その間、5万人を超える人を殺した、歴史的戦争犯罪だとぼくは考えていますが、ソビエト社会主義連邦という国そのものが消滅したあたりからでしょうか、「悲惨な出来事」として、自然災害か何かのように情緒的に語られ、時の流れの中で、語る人そのものが亡くなっていき、忘れられていく風潮を疑問に思ってきました。 で、今、「ラーゲリ」です。観始めたときには「はてな?」というのが素直な実感でしたが、観ながら、素直に泣きました。さそってくれた知人によれば、主人公の山本幡男(二宮和也)という方の出身地である隠岐の島の高校では、学校行事で全員鑑賞して、高校生たちが号泣だったそうです。 1945年8月、敗戦直後の満州で、夫であり父である主人公と生き別れ、彼の存命を祈り続けた家族に、自らの死に際して、九死に一生を得て生き延びて帰国を果たした友人たちの口伝えの遺言として「よく生きること」という言葉を残した主人公の抑留生活を、実に丁寧に描いていて、泣くよりほかに手立てがない作品でした。 どちらかというと、情緒的でヒューマンな展開に対して、自分自身としては予想外の涙という反応に驚きましたが、出来れば、号泣したという高校生たちが、ここから歴史を振り返る縁となればいいなあと、これまた素直に思いました。 瀬々敬久という監督は、もともとピンク映画の巨匠だったそうです。90年代くらいから、山のように撮っていらっしゃいますね。そのあたりの作品はよく知りませんが、ここ数年の「64」とか「菊とギロチン」とかは見ていて「この人、社会派?」という印象だけは持っていました。なんか、日本映画の監督で久しぶりにお前を覚えそうです(笑)。ああ、瀬々敬久に拍手!でした。知人によれば夫の二宮和也くんも、彼を待ち続ける妻山本モジミを演じた北川景子さんもよかったそうです。ついでに拍手!ですね。 監督 瀬々敬久 原作 辺見じゅん「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」(文春文庫) 脚本 林民夫 撮影 鍋島淳裕 美術 磯見俊裕 露木恵美子 編集 早野亮 音楽 小瀬村晶 主題歌 Mrs. GREEN APPLE キャスト 二宮和也(山本幡男) 北川景子(山本モジミ・妻) 市毛良枝(山本幡男の母) 寺尾聰(山本顕一・長男2022年) 松坂桃李(松田研三) 中島健人(新谷健雄) 桐谷健太(相沢光男) 安田顕(原幸彦) 2022年・133分・G・日本 配給 東宝 2023・01・28-no013・109シネマズハットno22 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.08.01 16:22:59
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