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カテゴリ:映画 香港・中国・台湾の監督
チャン・イーモウ「崖上のスパイ」シネリーブル神戸 予告編から気になっていました。現代中国製で、なんと1930年代の満州国を舞台にしたスパイ映画らしいということに興味を持ちました。聞くところによると監督も、現代中国映画界では名の知られた人のようです。 で、観たのがチャン・イーモウ監督の「崖上のスパイ」でした。観終えて思いましたが、これも邦題が変ですね。「崖上」を映画館の受付の人が「ガイジョウ」と読んでいましたが、そんな日本語の熟語あるんですかね?マア、そう読めるから熟語だといわれれば、そうなんですかですが、多分、起こっている状況に対して「がけっぷち」という意味で使われている原題「懸崖之上」を直訳して「崖上」ですませている感じが、ちょっとついていけません。で、映画ですが、ちょっと呆れてしまいました。映像は悪くありません最初の雪の森林シーンから、尋問や虐殺のシーン、列車での逃亡シーン、なかなか見ごたえがあります。しかし、おそらく脚本なのでしょうが、個人的な感想に過ぎませんが、筋立ての細部に変なところが多すぎました。 最初に、ハテナ?だったのは、ソビエトから侵入するスパイに対峙する「満州国」の特務機関に日本人が一人もいないことでした。当然、映画の中に日本語による会話は一度も出てきません。続いて、潜入した4人のスパイが夫婦だったり、あたかも恋人同士だったりしたことです。それぞれ、1930年代の満州国や大日本帝国の後方かく乱を狙った潜入スパイを描いた映画としてはありえないんじゃないでしょうか。ついでに言えば、暗号解読書の取り扱いも安易ですし、スパイ・サスペンスではモグラと通称されるスリーパー・エージェント、まあ、一番。面白い役どころなのですが、その役で潜り込んでいる周乙ジョウ・イー(ホーフェイユー)の、最終的な行動も安易すぎます。それこそ、スパイはもっと非情ではないでしょうか。 なんだか、半分しらけながら見ていて、この映画のスパイたちが遂行している「ウートラ作戦」の、「ウートラ」の意味が「夜明け」というロシア語らしいことまでは我慢できたのですが、映画の終盤で満州国の反共体制を批判しながら、「明けない夜はない」という、「いったい、いつの時代のセリフなのか?」と耳を売ア違う台詞がスパイたちによって大真面目に口にされるに至って、「これって、中国の国策映画?」という気がして笑ってしまいました。 ただ、「国策映画」云々は1930年代の国共合作の実態や、1932年に建国した満州国での反日帝的な民族運動について、まあ、何も知らないままの妄言ですから見当違いなのかもしれませんが、巨匠(?)チャン・イーモウ監督ということですが、少々杜撰な脚本だったのではないでしょうか(笑)。アカデミー賞の中国代表作だそうですが、なんだかなあでした。(笑)だって、映画は1930年代が舞台ですよ。で、舞台は満州ですよ。当人たちが共産主義者なのはわかりますが、日中戦争、国共合作から国共内戦を経て、毛沢東が主席として中華人民共和国を樹立するのは1949年ですよ。このあと20年近くの間、行方のしれない戦争が続くのが中国なのですからね。 監督 チャン・イーモウ 脚本 チュアン・ヨンシェン チャン・イーモウ 撮影 チャオ・シャオティン 音楽 チョ・ヨンウク キャスト 張憲臣チャン・シエンチェン(チャン・イー) 周乙ジョウ・イー(ホーフェイユー) 王郁ワン・ユー(チン・ハイルー) 小蘭シャオラン(リウ・ハオツン) 楚良チュー・リャン(チュー・ヤーウェン) リー・ナイウェン ニー・ダーホン ユー・アイレイ フェイ・ファン ライ・チァイン シャー・イー 2021年・120分・PG12・中国 原題「懸崖之上」「Cliff Walkers」 2023・02・13-no017・シネリーブル神戸no174 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.31 22:33:04
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