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伊丹十三「静かな生活」こたつシネマ ここのところ、大江健三郎の小説に、ちょっと、はまっています。昨年の秋ごろから、ほぼ10年ぶりの大江作品なのですが、一作づつ読み終えた時の印象が以前読んだ時と、なんだか大きく変化していることが驚きで、次は?次は?という感じで読み続けているさなかに訃報が伝えられました。3月のことです。
「そうか、死んじゃったのか?」 ノーベル賞受賞のころの、いわゆる後期の作品はともかく、1960年代から70年代に出ていた「大江健三郎全作品(第1期・第2期)全12巻」(新潮社)に収められた作品群は、ボクにとっては「青春の読書」の人だったわけですから、その作家の死が感慨深いのは、まあ、当然なのですが、亡くなった時に読んでいたのは「静かな生活」(講談社)という80年代に書かれた作品でした。 読み終えて、「初めて読んだ」という印象だったのですが、その後、メモした付箋が複数貼られている、別の単行本が棚から出てきたところを見ると、再読だったようです。 「まあ、そんなもんだ。」とか思っていると伊丹十三が、その作品を映画化した「静かな生活」をテレビでやっていたので見ました。 原作を読んだばかりでしたから、映画監督が、原作をどんなふうに読んで、どんなイメージを作ったのかということに興味を持ちましたが、見始めると同時にポカン!?として、結局、ポカン?!としたまま映画が終わってしまいました。 小説中のエピソードは映画の中でも使われているのですが、小説で描かれている世界とはまったく別の世界が、映像として繰り広げられている印象でお手上げでした。登場人物たちの演技も、小説でボクが感じていた印象とはかなり違っていて、マーちゃん役の佐伯日菜子さんも、イーヨー役の渡部篤郎くんも、熱演だったと思うのですが、ついていくことができませんでした。 最初に 「えっ?なに?」 という感じで違和感を感じたところは会話の中で聞こえてくる声の音でした。多分、会話のテンポと声の音が、いかにも、お芝居のテンポと映画の音の印象が強くて、小説を読んでいるときに思い浮かべているイメージと違うことに引っかかったのでしょうね。 映画の中には、いかにも伊丹十三という印象の、小説にはないシーンもありますが、 「なぜ、このシーンがこんなふうに描かれるのだろう?」 というような疑問ばかり浮かんできて、素直に没入して面白がることはできませんでしたね。 読んだことのある小説の映画化作品を見たことがないわけではありませんが、この、ギャップ感は何でしょうね。やっぱり、書いているのが大江で、撮っているのが伊丹十三だということに理由があるのでしょうかね。まあ、ボクの読み方に問題があるとは思うんですけどね。今日は、拍手は無しですね。ザンネン! 監督 伊丹十三 脚色 伊丹十三 原作 大江健三郎 撮影 前田米造 音楽 大江光 編集 鈴木晄 キャスト 佐伯日菜子(マーちゃん) 渡部篤郎(イーヨー) 山崎努(パパ) 柴田美保子(ママ) 今井雅之(新井君) 緒川たまき(天気予報のお姉さん) 岡村喬生(団藤さん) 宮本信子(団藤さんの奥さん) 大森嘉之(オーちゃん) 原ひさ子(おばあちゃん) 結城美栄子(フサ叔母さん) 左時枝(朝倉さん) 渡辺哲(筋肉質の男) 阿知波悟美(黒川夫人) 柳生博(キャスター) 1995年・121分・日本・東宝 2023・04・22-no055・こたつシネマ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.14 23:55:30
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