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100days100bookcovers no89(89日目)
嵐山光三郎「漂流怪人・きだみのる」(小学館文庫) シマクマ君に回ってきた、ブックカバー・チャレンジ89日目は嵐山光三郎「漂流怪人・きだみのる」(小学館文庫)です。イラストレータの南伸坊が、腰巻の文章を引用しながらこんな解説を書いている本です。 「きだみのるはファーブル「昆虫記」の訳者で、戦中「モロッコ紀行」を書いたブライ派の学者である。雑誌「世界」に連載した「気違い部落周遊紀行」はベストセラーになり、映画化され、大ヒット。嵐山は雑誌「太陽」の編集部員であった28歳のとき、きだみのる(75歳)と、謎の美少女ミミくん(7歳)と一緒に取材で各地をまわった。フランス趣味と知識人への嫌悪。反国家、反警察、反左翼、反文壇で女好き。果てることのない食い意地。人間のさまざまな欲望がからみあった冒険者。きだ怪人のハテンコウな行状に隠された謎とはなにか。」(本書腰巻) 28歳の青年が、75歳の怪人と運命的に出会う。そしてそこに少年のような7歳の少女。これは「きだみのる」の評伝であり、しかも嵐山光三郎の青春記でもある。 どうです?面白そうでしょ。まず著者の嵐山光三郎ですが、怪しい探検隊の椎名誠が流行っていたころ、ともに「昭和軽薄体」と呼ばれて登場した人だったと思いますが、ぼく自身は「素人包丁記」(講談社文庫)とか「文人悪食」(新潮文庫)とかの、「くいしんぼ」エッセとか、「温泉」エッセイでお世話になってきた人です。伝記(?)では「桃仙人小説 深沢七郎」 (中公文庫)、「 悪党芭蕉」(新潮文庫)とかが評判になりました。 もともとは平凡社の「太陽」という名雑誌の編集長だった方です。平凡社といえば百科事典です。で、「百科事典の巨人」林達夫というとんでもないインテリが思い浮かんでくるのですが、先日、一緒に本読み会をやっている、ほぼ同世代の本好きの方に名前を言ったところ「誰、それ?」という返答だったわけで、この記事をお読みになっている方にも、今や、あんまりピンと来ない名前なのかもしれませんね。 今回、紹介している本の中で主人公であるきだみのるが山田吉彦という本名で「ファーブル昆虫記(全10巻)」(岩波文庫)を訳していますが、その昆虫記で、共訳者といて名前が出てくるのが林達夫です。中公文庫に「共産主義的人間」という小冊子ですが、名著が、たぶん、今でもあります。 まあ、話は戻って、その嵐山光三郎の最新作が「漂流怪人・きだみのる」(小学館文庫)です。 紹介ついでに「きだみのる」についてですが、ぼくはファーブル昆虫記の訳者で本名山田吉彦の方は 中学生のころから知っていましたが、「気違い部落周游紀行」 (冨山房百科文庫)の人だということを知ったのは、ずっと後のことです。 実は、先だって、YAMAMOTOさんが「土佐源氏」の宮本常一を話題になさったときに読み直そうと思いついた人でした。で、元あった棚から取り出したのはいいのですが、それをどこに置いたのかわからなくなって、さがしていて見つけたのが嵐山光三郎のこっちの本というわけでした。 きだみのるの「気違い部落周游紀行」 (冨山房百科文庫)は敗戦直後の八王子の山村のルポルタージュで、1948年の第2回毎日出版文化賞受賞作です。戦後すぐの、ニッポンの村社会を描いた名著です。 1957年、渋谷実が監督で、松竹で映画化していて伊藤雄之助とか淡島千景が出ていて、大ヒットしたそうです。 著者のきだみのるは、戦前、ソルボンヌでマルセル・モースに学んだフランス帰りですが、帰りに立ち寄ったモロッコについて、後に、岩波新書で「モロッコ」として再刊されている「モロッコ紀行」(日光書院)という本を出したのが社会学者としてデビュー作で、日中戦争の最中のことです。 宮本常一が柳田民俗学の異端だったとしたら、きだみのるは戦後の社会学、文化人類学の異端といっていいかもしれません。戦後社会を「漂流した」怪人物です。 本書は、上に引用した南伸坊の解説にある通り、1970年代、「太陽」の若き編集者として「きだみのる」と仕事をした嵐山光三郎の「思い出の記」です。 きだみのると彼の幼い娘を巡るスキャンダルについても、彼ら親子を利用して「子育てごっこ」というインチキ作品で一世を風靡した直木賞作家、三好某のスキャンダルとともに暴露されています。 いろんな、意味で、読みごたえというか、暇つぶしに最適というか、面白さ満載です。 DEGUTIさんの88日目はチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ「半分のぼった黄色い太陽」(くぼたのぞみ訳 河出書房新社)、アフリカの女流文学でした。いや、アメリカ文学でもあるかもです。何しろ、アメリカ、カナダの英語の短編小説に与えられる「オー・ヘンリー賞」受賞作家ですしね。バトンをいただいたのは2022年の7月の末でした。 作家の西加奈子が、KOBAYASI君が紹介したルシア・ベルリンの翻訳者岸本さちことのラジオ番組の中で紹介していたというのが、まあ、いわゆる付け筋のようですが、 「なるほどなあ、そういう繋がりでお読みになっていらっしゃるのか。」 と、まあ、皆さんの紹介を読みながら、いつものことではあるのですが、今回も感心することしきりで、 「じゃあ、ぼくも読んでみようかな…」 というわけで、早速、借り込んできた「半分のぼった黄色い太陽」(くぼたのぞみ訳 河出書房新社)とか「アメリカーナ」(くぼたのぞみ訳 河出書房新社)とかをパラパラしながらそのあまりの分厚さにちょっとたじろぎました。両方とも2段組みで500ページを超えるのです。 「こりゃ、すぐに読むのは無理やな(笑)。じゃあ、89日目は何にしようかな?」 で、89日目の付け筋ですが「半分のぼった黄色い太陽」をラジオ番組で紹介していたという西加奈子という作家は1977年、父の任地イランで生まれた人で、いったん帰国しながら、小学生時代にはエジプトに渡り、帰国後、通天閣の街を描いた「通天閣」(ちくま文庫)で織田作之助賞をとって登場したのが2007年です。 その後、イランやアフリカの暮らし(?)をネタにして書いた「サラバ」(小学館文庫)で直木賞作家になった人ですね。まあ、云ってしまえば 「アフリカから帰ってきた女」 というわけで、ぼくのこじつけですが、本書の主人公きだみのるは 「アフリカから帰ってきた男」 というわけです。ハハハ、こじつけです。嵐山さんが帰ってきたわけではありません。で、いいわけですが、コロナから帰ってきたシマクマ君は、少々不調でして、文章の脈絡が整理できていません。なにを書いているのか、実は、よく分からないのです(笑) まあ、そういうわけで、とりあえず、バトンをお渡ししたい一心の紹介でした。YAMAMOTOさん、よろしくね。(笑)(2023・08・31・SIMAKUMAくん) 追記2024・04・05 100days100bookcoversChallengeの投稿記事を 100days 100bookcovers Challenge備忘録 (1日目~10日目) (11日目~20日目) (21日目~30日目) (31日目~40日目) (41日目~50日目) (51日目~60日目)) (61日目~70日目) (71日目~80日目)という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと備忘録が開きます。 追記 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.04.18 22:28:18
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