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カテゴリ:読書案内「近・現代詩歌」
八木重吉「明日」 鮎川信夫「近代詩から現代詩へ」(思潮社)より 鮎川信夫の「近代詩から現代詩へ」(思潮社)という解説集を案内しましたが、その「八木重吉」の項で取り上げたのは「明日」という詩でした。 まず、こんなふうに詩人のプロフィールを語ります。 内村鑑三に私淑し、キリスト教徒として敬虔な信仰生活を送ったといわれる八木重吉は、わずか二十九才の若さで病没しているが、生存中に書かれた詩は意外に多く、七百篇を越えるといわれている。折りにふれての感懐が、日記でもつけるように次々と短詩のかたちでメモされていったという印象をうける。 で、詩が紹介され、こんな解説がサラッと記されています。 「明日」という詩には、作者の実生活の意識がかなりはっきりあらわれていて同情をひく。神を信じ、愛を信じ、生きることに希望を見出してゆく詩人の一途の心が、ごく自然な形で表現されている。 この、短い評言を読みながら、八木重吉の詩はどの詩を読んでもさびしい、そう読んで間違いなかったんだという安心感のようなものに浸りながら、あまりにも信じすぎている人間の無垢の心が、それに応えることのできない現実の貧しさを洗いだして、そこにさむざむとしたスキマをつくっている。という結語に唸るのでした。 八木重吉が結核で亡くなったのは1927年(昭和2年)10月26日だそうです。「明日」の中に「富子」として名前が出てくる妻登美子は、重吉亡き後、残された二人の子どもを女手一つで育てますが、桃子を1937年(昭和12年)、陽二を1940年(昭和15年)、それぞれ結核で失います。ただ、彼女自身は、その後、歌人の吉野秀雄と再婚し、1999年まで生きられたそうです。彼女の遺骨は1967年に亡くなった夫、吉野秀雄の遺言で、八木重吉の墓に分骨され埋葬されているそうです。胸打たれる話だと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.15 09:51:51
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