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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
デレク・ジャーマン「カラヴァッジオ」元町映画館 2022年の秋から見始めている「12ヶ月のシネマリレー」という企画の完走が目的で、何の予備知識もなしでやってきた元町映画館でした。観たのはデレク・ジャーマン監督の「カラヴァッジオ」、1986年に公開された作品でした。
ふしぎな映画でした。ルネッサンス絵画、ボクのような素人の理解では「モナ・リザ」が、まあ、その代表でしょうが、その後、16世紀の終わりから17世紀にかけて、新しいリアリズム絵画として登場したのが、所謂、バロック絵画ということになるのでしょう。で、その時期に、なんというか、異様に印象的な絵を残していて、20世紀後半になって評判になったのがミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオという絵描きです。 宗教画とは思えないような残酷で、スキャンダラスともいえる画風ですが、一方でフェルメールの光とラ・トゥールの闇へと続くかに見える光と影の描き方は、ルネッサンス絵画と一線を画する独特さで、ボク自身は10年ほど昔ですが、当時、沢山の案内本が出たのですが、その中で神大の芸術学の先生である宮下規久朗の解説が印象深くてハマッタ思い出のある画家です。 映画は、その画家の二人の愛人をめぐる回想をドラマ化していましたが、伝記的な事実との一致はともかく、最初から最後まで、映像的にはとても印象的な作品でした。 最初に不思議な作品といいましたが、一つは、映画の中でモデルを配置して描いているシーンが、幾通りかあります。 「これはあの絵の!」 まあ、そんな指摘はとてもできないのですが、そのモデルを配置しているシーンが映像として映るのですが、一瞬、静止して見えるそのシーンがカラヴァッジオの絵そのもので、映画の中で主人公がキャンバスに描いている絵の方も映るのですが、 「こっちはちょっと違うな。」 という不思議でした。 部屋にモデルを並べて画家が見ているシーンが本物で、それを描いた絵画の映像は偽物って・・・? それは、なんというか、クラクラするような体験でした。 もう一つは、結末のシーンでした。主人公カラヴァッジオの愛人でもあり、まあ、こっちも愛人なので話がややこしいのですが、絵のモデルをしている男性ラヌッチオの恋人でもあったはずのレナという女性の死をめぐって、ラヌッチオの首を真一文字にナイフで刎ねるシーンの鮮やかな残酷さに感じた驚きと不条理でした。 女性のレナも男性のラヌッチオも、カラバッジオにとっては愛の対象であったはずなのに、どうしてこうなったのかというストーリー上の疑問が、当然湧くのですが、それ以上に、ひょっとしてデレク・ジャーマンという監督は、この、実に鮮やかな殺人シーンが撮りたかったのではないかという、ボク自身の中では解決しそうもない不思議な感動でした。 カラバッジオには、たとえば「ゴリアテの首を持つダビデ」というような、まあ、残酷な構図の絵がありますが、その奥底にある不条理というか、わけのわからない怒りの衝動というかに対する監督の共感を、なんとしてでも映像化しようとでもいうような迫力を感じさせるシーンでした。 が、まあ、見終えて 「疲れたなあ・・・」 と、感じたことも事実です。でも、まあ、映画そのものとしては納得の作品で、今は亡きデレク・ジャーマンに拍手!でした。 監督 デレク・ジャーマン 脚本 デレク・ジャーマン 撮影 ガブリエル・ベリスタイン 美術 クリストファー・ホッブズ 衣装 サンディ・パウエル 編集 ジョージ・エイカーズ 音楽 サイモン・フィッシャー・ターナー キャスト ナイジェル・テリー(カラヴァッジオ) ショーン・ビーン(ラヌッチオ) デクスター・フレッチャー スペンサー・レイ ティルダ・スウィントン(レナ) マイケル・ガフ 1986年・93分・G・イギリス 原題「Caravaggio」 配給:東北新社 日本初公開:1987年8月8日 2023・05・29・元町映画館no170 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.06.30 22:23:15
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