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カテゴリ:映画「パルシネマ」でお昼寝
小津安二郎「お早う」パルシネマ パルシネマが小津安二郎の「お早う」とヴィム・ヴェンダースの「パリ、テキサス」という2本立てをやっていました。
なんか、笑いだしそうなプログラムですが、笑っている場合ではありません。SCC、シマクマシネマクラブの第10回例会です。 「覇王別姫」を見た前回の第9回では「監督の人間性を疑わせる悲惨なシーンが見るに堪えない!」と否定されてしまったわけで、一応、案内人のシマクマ君はかなりうろたえています。「なかなか、あたり!の作品には出逢えないものですね(笑)」とかともおっしゃっるのですが、それを聞いているシマクマ君は、満塁のピンチに、どこに投げたらストライクなのか、マウンド上で立ちすくむノーコン投手の気分です(笑)。 で、お誘いしたのが「お早う」と「パリ、テキサス」でした。 どうだ、文句あるか! なかなかないセットのプログラムで、パルシネマもやってくれるじゃないかと思ったんですが・・・。 というわけで、今回は、まず、「お早う」編です。 「いかが、でしたか?」どうも、またもやハズレだったようで、会話が途切れてしまいました。 というわけで、ここからは、やっぱり独り言ですね。まあ、誰に語り掛けているのかわからない語りですがご容赦いただいて、喋ります。 何というか、小津というと、という感じでアングルの話とか出てましたけど、カメラの位置や角度が映画のシーンを見る人間にどんな印象を与えて、どういう表現を受け取るのかなんてことは、正直なところボクにはよくわかっていません(笑)。まあ、そういう所に小津なら小津の作品の特質を見たいのであれば、彼の作品を10本くらいご覧になって、共通するものが何かということに納得されての話じゃないでしょうか。 ダイコン劇場って揶揄したようなことをボクはいいましたが、構図へのこだわりがこの監督の特徴の一つで、登場人物たちがとまってしまうような印象をボクは持つのわけですが、ビビッドな動きが印象的な黒沢明の画面なんかと比べて、ダイコン畑のようになるんですね。もちろん黒沢の画面だって構図ですよね、映画なのですから。でも、、何というのでしょうか、登場人物がはみださない印象の小津の画面って、やっぱり独特なんですね。演出風景を想像するとこんな感じですね(もちろん、ボクの思いつきのデタラメですよ(笑))。 「あのーここに座っていればいいんですか?」 だから、この映画でも、子役たちはともかく、杉村春子とか三宅邦子とか、名うての芸達者なはずなのですが、突っ立っている印象で、眼と口の動きだけのように見えるのですね。とても、中学生の母親には見えません。 登場人物たちの暮らす住宅の様子や、まあ、堤防の上を歩く子供たちのやりとりのパターン化の印象も、多分その「構図」の強調あたりに原因がある気がします。 しかし、だから、つまらないのかというと、なかなか簡単にはいえないところが、小津映画なのですね(笑)。 あの日、ボクは家に帰って、まあ、いつものように同居人に「お早う」という映画の様子を説明し始めて、驚きました。次から次へとシーンが浮かんでくるんです。 たとえば、兄弟二人がお櫃を持ち出して、近所の土手に、並んで座って、手づかみでご飯を食べながら「おいしいね」といったり、薬缶のふたでお茶を飲みながら、「おかずを持ってくればよかったね」とか何とかいい合うシーンだけでも、ボク自身の子ども時代の体験や、我が家の愉快な仲間たちの子ども時代の思い出まで引き合いに出して、どんどんおしゃべりになっていって、聞いてる同居人をあきれさせたのですが、その、ボクのなかに勝手に湧いてくる「豊かさ」はどこからくるのでしょうね。 漱石だったかが「I LOVE YOU」というセリフは「月がキレイですね」と訳すんだといったという話をどこかで聞いたか、読んだかしたことがありますが、この映画の最後のプラット・ホームでのシーンで佐田啓二が久我美子に「天気がいいですね。」とか何とか、陳腐なセリフをいいますが、漱石の指摘した含意が、あのシーンのセリフだけじゃなくて、映像全体に充満しているといってもいいかもしれませんね。 見ているこっちが、勝手に、しかし、いつの間にか、受け取っているんですね。そう考えてみれば「お早う」という題名も、「男はいらんことをいうな」という父親のセリフも、中学生の実君の「大人はいらんことばかりいっている」というセリフも、小津映画的には、相当、意味深ということになりそうですね。 同じ日の2本立てで「パリ、テキサス」を見たヴェンダースが笠智衆を撮った「東京画」というドキュメンタリーを見たときに驚いたのですが、笠智衆って、口調とか抑揚とか、普通の老人として話せるのですね。その笠智衆が、小津映画ではワン・パターンの置物化するのは何故かということですね。ねっ、深いでしょ? 今日見た「お早う」なんて、小津の作品群では、それほど評価の高い作品ではないと思いますが、思いがけなく面白かったというか、ボクは納得でしたね。映画の感想では、きいたふうなことはいわないでおくというのが、ボクなりの心構え(?)のつもりなのですが、なんか、調子に乗ってしゃべってしまいましたね(笑)。まあ、ということで、独り言を終えたいと思います(笑)。 監督 小津安二郎 脚本 野田高梧 小津安二郎 撮影 厚田雄春 美術 浜田辰雄 音楽 黛敏郎 編集 浜村義康 キャスト 笠智衆(林啓太郎・民子の夫) 三宅邦子(林民子・啓太郎の妻) 設楽幸嗣(林実・兄・中学生) 島津雅彦(林勇・弟・小学生) 久我美子(有田節子・林家同居・民子の妹) 三好栄子(原田みつ江・きく江の母) 田中春男(原田辰造・夫) 杉村春子(原田きく江・妻) 白田肇(原田幸造・中学生) 竹田浩一(大久保善之助・夫) 高橋とよ(大久保しげ・妻) 藤木満寿夫(大久保善一) 東野英治郎(富沢汎・職探しの夫) 長岡輝子(富沢とよ子・妻) 大泉滉(丸山明・テレビを持っている近所の人) 泉京子(丸山みどり・明の妻) 佐田啓二(福井平一郎・失業中) 沢村貞子(福井加代子・自動車のセールスウーマン) 殿山泰司(押売りの男) 佐竹明夫(防犯ベルの男) 桜むつ子(おでん屋の女房) 1959年・94分・日本 配給 松竹 劇場公開日:1959年5月12日 2023・09・25・no118・パルシネマno64・SCC第10回 ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.17 14:37:03
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