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カテゴリ:映画「パルシネマ」でお昼寝
マイケル・モリス「トゥ・レスリー」パルシネマ
「アフターサン」との2本立ての、もう1本はマイケル・モリスという監督の「トゥ・レスリー」という作品でした。 ロトという宝くじが、日本にもありますが、子持ちのシングル・マザーだったレスリー(アンドレア・ライズボロー)という女性が大当たりをひいたというのが、映画の前提で、くじで手に入れた19万ドルというあぶく銭のせいで、酒浸りの生活で、無一文、とうとう、住んでいたアパートから追い出されるシーンから映画は始まりました。すべてを失ったらしいレスリーが頼るのは、息子のジェームズですが、彼はレスリーが生活を失っていく過程で捨てられた息子です。ジェームス自身は、まだ10代のようですが、建築現場の作業員として自活しています。ジェームスは、まあ、息子ですから、行き場を失って転がり込んできた母親レスリーを受け入れようとしますが、息子と暮らし始めても、息子にも禁じられた酒が、やはり、やめられない母親を、結局、追い出さざるを得ないのが、見ているこっちにもよくわかる展開で追い出します。 で、レスリーは住んでいた町にUターンするのですが、このままではうまくいかないでしょうね。見ているこっちも疲れるのですが、レスリー役のアンドレア・ライズボローの演技は、まあ、チラシの写真にも写っていますが一見の価値があります。自暴自棄とか、下品とか、だらしがないとか、その境遇に陥って、酒にすがるほか生きていくすべを思いつかない人間、それも女性の顔や姿態の醜態を、これでもかといわんばかりに演じています。見ていて、正直、うんざりします(笑) ウンザリしながらですが、彼女が身を持ち崩すことになった19万ドルという金額が、日本円に換算すると、2000万円くらいだと気づいて、唖然としました。 なんという貧しさでしょう! もちろん、ボク自身にとって、2000万円という金額は大金です。そんな金はどこにもありません。あれば、うれしいに決まっています。しかし、何とか生き延びていく生活の未来を見失う額だとはとても思えません。にもかかわらず、現代アメリカを生きている一人の女性が何とか生き延びていく道を見失っている姿が、かなりなリアリティーで、目の前に描かれているのです。これを、貧しさといわずに、何といえばいいのでしょう。他人ごとではありません。おそらく、現代日本だって、この貧しさを共有しているに違いありません。 映画は、スウィーニーとロイヤルという二人の人間との出会いによって、レスリー自身の自己肯定の意思、すなわち、酒をやめる意思が芽生えてくることで、ホッとする結末を迎えます。見ている誰かを励ますに違いないヒューマン・ドラマの結末というわけです。 しかし、ボクは納得がいきませんでした。レスリーが酒におぼれたのは彼女の個人的な問題でしょうか。レスリーが生きている、イヤ、ボクもそこで生きている、現代社会に充満している「貧しさ」について、この映画はどうして問いかけないのでしょう。 レスリーの回復の過程でクローズアップされるのは「自己決定」の意思の芽生えだったといっていいと思いますが、その、心温まるシーンでの、アンドレア・ライズボローが初めて見せる美しい表情を見ながら、「自己責任」という嘘くさい流行言葉が浮かんできてしまったのですが、どうしたらいいのでしょうね(笑)。 ぶつくさ文句を言っていますが、何度もいうようにアンドレア・ライズボローという女優さんは、なかなかでした。拍手!ですね。しかし、マイケル・モリスという監督さんには???でした。やはり、チョット、突っ込み不足で、納得がいきませんね(笑)。 監督 マイケル・モリス 脚本 ライアン・ビナコ 撮影 ラーキン・サイプル 美術 エマ・ローズ・ミード 衣装 ナンシー・セオ 編集 クリス・マケイレブ 音楽 リンダ・ペリー 音楽監修 バック・デイモン キャスト アンドレア・ライズボロー(レスリー 母) オーウェン・ティーグ(ジェームズ 息子) スティーブン・ルート(ダッチ) アリソン・ジャネイ(ナンシー) マーク・マロン(スウィーニー) アンドレ・ロヨ(ロイヤル) 2022年・119分・G・アメリカ 原題「To Leslie」 2023・10・03・no122・パルシネマno67 ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.07 01:35:59
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