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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2023.10.09
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​​桜庭一樹「東京ディストピア日記」(河出書房新社)
​​​​​​​ 中国の方方 (ファンファン)という女性作家の「武漢日記」(河出書房新社)を読んで案内しました。で、その日記の英訳者マイケル・ベリーというカリフォルニア大学の中国研究者が書いた「『武漢日記』が消された日」(河出書房新社)を、ついでというか、成り行きで案内したのですが、日本国内でも同じ河出書房新社から東京ディストピア日記」という、コロナ日記が出ていることに気づいて読みました。​​​​​​​
​​​​​​ 書いているのは桜庭一樹という、15年ほど前に「私の男」(文春文庫)という暗い話で直木賞をとった、東京暮らしの「女性作家」です。直木賞作品は、その当時読みましたが、どうも、女性作家であるようなのに、桜庭一樹というペン・ネームを不思議だと思った以外、何の記憶もない人でした。目次は後ろに載せますが、2020年1月から2021年の1月までの1年間、東京での暮らし綴られた日記です。​​​​​​
​​​​ 最初が2020年1月26日です。おそらく彼女の住まいから見えるのでしょうね、東京スカイツリーの電飾と隅田川の屋台船の話です。コロナの話は、まだ始まりません。​​​​
​​​​ 日記としては三日目の記事で、2月8日​​
​​「中国で猛威を振るう新型コロナウィルスのニュースが毎日流れるようになった。」​​​
​ という記述が出てきて、そこからが、日本版「コロナ日記」の始まりです。​​​​
​​​​​​​​​ 今、シマクマ君がこの記事を書いているのは、2023年10月9日です。桜庭一樹のこの日記が始められて、3年と10カ月が過ぎたわけです。個人的な年月の経過の思い出は、とりあえず後回しにして、彼女の日記に繰り返し登場する固有名詞は、アベ、コイケ、トランプ、付け加えるなら、スガ、モリ、あたりです。みんな、インチキをさらしたで政治家たちですが、何といっても、アベという人が、すでにこの世の人ではないという時間間隔は圧倒的ですね。​​​​​​​​​
​​​​ 2020年アベは、わけのわからないマスクを、国家事業として配布した当事者で、秋には辞職して、スガという名前が「ガースーです。」とかなんとか笑いながら登場したのですが、覚えていらっしゃるでしょうか?​​​​
​​ どうでしょう、アベという名前の、あの人物は、すでにこの世にはいないということが、この3年間の、不思議な時間間隔を加速させるとお感じになりませんか?。「歴史事実」ということが、やたらと話題になる今日この頃ですが、日常的な備忘録として、妙に迫ってくるのが、この「東京ディストピア日記」でした。​​
 桜庭一樹自身が、コロナが蔓延し、後先が見えない日常の中に生きる一人の人間として、自分自身の感受性の変化を真摯に記録しようという意思で、日記を書き続けていることは目次の表題にも表れているのですが、とりあえずシマクマ君が目を止めたのはここでした。
 コロナ騒動が、他人ごとではなくなり始めた、2020年の3月の末、29日(火)のこんな一節です。
 昨日、国内の一日の感染者数が二百人を超えた。
 大学生たちに対し、感染拡大を避けるため、都会から地方に帰省しないようにとの声が強まっている。
 関西の大学では、学生八名の集団感染が起こった。欧州に卒業旅行に出かけた四名と、彼らと卒業祝賀会で同席した四名だ。これにも「感染爆発の時期に欧州に行くなんて」と非難の声が飛び交っているが、大学の講師の知人が「学生がかわいそうだよ!今どんなに責任を感じていることか!だいたい、あの時期は欧州でまだ感染爆発してなかったのに!」と強い口調で言うので、はっとした。世界中のいろんなニュースが絶え間なく流れ、私も、出来事の順番がわからなくなっているのだ。(P46)  
​ なぜ、この記事が目に留まったのか。実は、この事件の当事者である​大学の教員​が古からの友人で、なおかつその教員は、自らも、この時コロナに感染し、生死が危ぶまれる体験をしたことを、本人から直接聞いたということもあって、本書の記述に出合った瞬間から、異様にリアルに「あの時」が浮かび上がって来て、まあ、後は一気読みでした。
 2020年12月31日
 寝転んで『モモ』を読み終わり、『武漢日記』(方方著)を読み、紅白を眺め、なんだか、夢から覚めた後もじつはべつな変な夢の中に閉じこめられているようななんともいえない気分で、あと数分でとうとう終わる、パンデミックでディストピアな二〇二〇年の端っこにくっついている。(P242)
​​​ ​2020年大みそかの記述です。桜庭一樹は、コロナ騒動の秋、突如、ミヒャエル・エンデ「モモ」が読みたくなり、第8章の「時間どろぼう」では、まあ、読んでいる物語に促されて時間をさまよったりするのですが、その標題なのですが、大みそかに読み終えたらしいですね。​​​
​​​ ​今となっては、まあ、誰もが知っていることですが、ここを書き終えて新年を迎えても、残念ながら、ユートピアにはなりませんでしたが、生活は続きましたよね。後遺症が怪しいのはコロナ感染だけではありません、ワクチンだって、かなり怪しいですね。被害者はすでに出ていると思いますが。​​​​
 アフター・コロナという流行言葉も、もう、廃れつつあります。
​​​喉元過ぎれば…。​​
​​ ここ3年間、いったい、なにがあったのか、「歴史的事件」を生きた人間の一人として、自分を見直していくためのよすがとして格好の1冊ではないでしょうか。
 最後に目次をあげておきます。
 目次

プロローグ


一 桜咲く

 二〇二〇年一月二十六日(日)~二〇二〇年三月八日(日)
二 日常の終わり
 三月九日(月)~四月七日(火)
三 ステイ・ホーム?
 四月八日(水)~五月六日(水)
四 新しい生活
 五月七日(木)~五月二十九日(金)
五 わたしは何者か?
 六月二日(火)~七月十八日(土)
六 ディストピア
 八月四日(火)~九月六日(日)
七 ガールクラッシュ
 九月十三日(日)~十月二十五日(日)
八 時間どろぼう
 十一月十五日(日)~十二月三十一日(木)
九 分断と融和
二〇二一年一月七日(木)~一月九日(土)

エピローグ​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​
​それではまたね(笑)。​


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最終更新日  2023.10.09 23:18:08
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