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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
チャオ・スーシュエ「草原に抱かれて」元町映画館 チラシと予告編を見て
これは見なくっちゃ! でやって来ました。元町映画館、朝一番です。映画はチャオ・スーシュエという若い女性監督の「草原に抱かれて」という、内モンゴル映画でした。 世界地図を広げると中国の北方にモンゴル高原が広がっていて、モンゴル共和国の外モンゴルと中華人民共和国の内モンゴルに分かれます。この作品は内モンゴル出身の監督によって、おそらく、内モンゴルのどこかに旅する母と子の物語でした。 内モンゴルの草原の風景をもう一度見たい! 映画館に来たボクの望みはそれだけでした。で、納得でした。40代のころに縁があって内モンゴル自治区の州都フフホトに出かける機会が何度かありました。出かけるたびに、現地でお世話になった方に案内していただいて「草原」に出かけることができましたが、そこで、ボクは、今までの人生のなかで最も遠くまで見える地平線を見たのでした。草原には羊がいて、小高い丘があって、その丘を歩いて越えると、また、まったく同じような丘があって、その、ズット向うにロシアやヨーロッパが地続きであることに胸が躍りました。 映画には、ボクが見たことのない湖も出てきますし、まっすぐな地平線も出てきます。街で老いて「草原の、あの木のある家にかえりたい!」と叫ぶ母を車に乗せ、サイドカーに乗せて青年は「あの風景の中」を走ります。もう、それで十分でした。 映画の始まりに、我を失った老母が長男夫婦と住んでいるアパートを飛び出し、その後を、いい年をした息子が追い、狭いアパートの一室を鉄格子で締め切った部屋に連れ戻すシーンが映ります。 危うく声をあげて泣くところでした。50年前、中学生だったボクの心の底に焼き付いて、忘れることができない、あの頃のわが家の風景が浮かんできたのです。 映画は、その老いた母を、馬頭琴を演奏し草原の歌をうたって人気歌手になっている弟が兄夫婦のアパートから連れ出し、草原の家、母の記憶にあるあの木を探して旅するロードムービーでした。 老母を鉄格子の部屋に閉じこめていた兄・長男が、別れに際して、母にすがって泣くシーンが、実は、一番心に残りました。 原題は「臍帯」、「へその緒」です。旅に出ても、油断すると徘徊を繰り返す母に手を焼いた弟が、母と自分を1本のロープで結わえるところに、その題の所以があると思いますが、本当は、モンゴルの大地と自然が大いなる母であって、そこを「帰る」場所だと信じている老婆とモンゴルの大地の関係をあらわしていたのだということに、深く納得した作品でした。 老いた母を演じ、湖を背景に美しく待って見せたバドマという女優さんに拍手!でした。それから、何といっても拍手!は撮影したツァオ・ユーと監督のチャオ・スーシュエという人ですね。ストーリーはシンプルですが、一つ一つのシーンがいいなあと思いました。拍手! 監督 チャオ・スーシュエ 製作 リウ・フイ フー・ジン 脚本 チャオ・スーシュエ 撮影 ツァオ・ユー 音楽 ウルナ イデル キャスト バドマ(母) イダー(アルス) 2022年・96分・中国 原題「臍帯 The Cord of Life」 2023・10・16・no125・元町映画館no207 ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.11.18 09:43:18
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