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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2023.11.17
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​​司馬遼太郎・林屋辰三郎「歴史の夜咄(よばなし)」(小学館文庫)
​​​​ 作家司馬遼太郎(1923年生~1996年没)歴史家林屋辰三郎(1914年生~1998年没)の対談です。​​​​
司馬 あの狛(こま)というあたりに、黄文(きぶみ)の絵師なんかがたくさん住んでいますね。だから黄文とか、黄色い色を出すというのは、新羅や百済のイメージよりは高句麗のイメージですね。
林屋 そうですね。黄色というのはほんとうに大事にされてきたのですね。要するに東・西・南・北は四神といって、青龍・朱雀・玄武・白虎とある、そのまん中はどんな色かと、これが黄色なんですな。
司馬 神聖色が黄色というわけですかね。
林屋 やっぱりこれは道教じゃないでしょうか。
司馬 道教でしょうね。あるいは道教以前から黄色信仰はあったかもしれませんが、道教が吸い上げた。道教では決定的に黄色ですね。
林屋 これはびっくりしましたな。かれこれもう十年近く前のことになりますが、伊勢神社の式年遷宮の時に、内宮の中まで開放しましたでしょう。そこで見たんですが、ちゃんと黄色が使われています。そういえば四神では黄色がないですものね。五色と言ったら黄色が入るのです。気がつかないのがふしぎなくらいで、その場合黄色をまん中に置くのですね。ちゃんと内宮と下宮の高欄に、その玉が入っています。
 全部白木の中で、あそこだけ五色の極彩色がパーッと見えるんです。
司馬 そうですね。私も物見高いものですから、その時の式年遷宮にも、そのまえのときも行ったのですが、あれは鮮やかな印象です。私が親しくなった宮司さんがおりまして、そのときはもう退役して老人になっておられましたが、要するにこれは中国のまねでしょう、と言ったらいやがりましてね。(笑)「思想としては道教じみていて、礼儀は儒教によったわけでしょう?」と言っても「うん。」と言わないのですよ。(笑)伊勢神宮のえらい人としては、やはりこれが惟神(かんながら)の道といいたいものですから。
 ところが伊勢神宮が単に神聖な場所というのではなくて、ある程度は国家鎮護のにおいがあって、効きめということでは道教でしょうね。
林屋 そうでしょうね。(古代出雲と東アジアP105~106)
 ちょうど読んでいたところからの引用です。いかがでしょうか、面白いですね。
​​​ 司馬遼太郎については、さすがに説明はいらないでしょうが、林屋辰三郎というと、「誰?それ?」となりそうです。​​​
​​​​​​ 金沢のお茶屋の御曹司で、京都帝大の史学科を出て、戦後、長く立命館史学の看板教授でしたが、ボクが学生の頃は、70年の大学紛争で立命館をやめて、京大の人文研の所長とかしておられた日本中世史の第一人者でした。「町衆」とか、「お茶」「お花」というような京都文化の世界を学問として説いてくれた人です。​​​​​​
​​​​​​​​​​ まあ、そのお二人が1970年ころに新聞紙上で連載対談なさったのが、1982年に単行本になって、その後、小学館ライブラリーに入っていたらしいのですが、​2006年​小学館文庫で再刊されたのがこの本です。
 今、思えば、司馬遼太郎という人は、1980年代から90年代の、所謂、「日本論ブーム」の火付け役にして、あれこれ薪を足しつづけることで、「歴史的視点」の広がりや客観性を支えた人だったと思いますが、もし、今、生きていらっしゃって、昨今の妙な歴史観の横行をなんとおっしゃるのか、チョット興味がありますね。
 対談のお相手である林屋辰三郎さんの、日本中世史についての著作も、もう一度読み直すべき基本図書だと思うのですが、忘れられているようですね。​​​​​​​​​​

​ 手に取ると、あれこれ興味の尽きない、超博識の老人二人の「夜咄(よばなし)」でしたが、元町の古本屋さんで100円でした(笑)。​
​​ 一応、目次をあげておきます。寂しいことですが、対談をなさっているお二人も解説を書いていらっしゃる陳舜臣さんも、もう、いらっしゃいません。古代史から、江戸、西から東を縦横にしゃべっておられる、在りし日のお二人をなつかしいと感じられたり、まあ、日本がどっちを向いているとかいう方面に興味のある方には、きっと、楽しい本です(笑)。参考までに、一応、目次を載せておきます。​​
 目次
遠近の感想―まえがき―司馬遼太郎

日本人はどこから来たか
 ​まず「古代」を半分にしてみる~古代日本はアジアの標本蔵​
日本人はいかに形成されたか
 ​日本的律令制のスタート~中世に終止符をうった秀吉​
古代出雲と東アジア
 ​イリュージョンの国・出雲~平和のデモンストレーション​
花開いた古代吉備
 高い生産力を誇る~秀才官僚を産む
フロンティアとしての東国
 ​勿来関(なこそのせき)の向う~商業の原点は京都・中京(なかぎょう)​
中世瀬戸内の風景
 ​生きるのが難儀な時代~津山は投馬(とうま)国か​
日本人のこころの底流
 ​諦めの浄土と活力の法華~芸術ショックに弱い日本人​
世界のなかの日本文化
 ​日本の中華思想~世界の文化の事務局に​
あとがき―林屋辰三郎
解説 陳舜臣



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最終更新日  2023.11.21 00:54:28
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