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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2023.12.03
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​​小池昌代(編)「通勤電車でよむ詩集」(NHK生活人新書)
​​ 今日の案内は、時々出逢っている女子大生さんたちに小池昌代という詩人の詩を紹介したこともあって、なんとなくネットで見つけて読み始めたアンソロジー詩集、小池昌代編集「通勤電車でよむ詩集」(NHK生活人新書)です。​​
​ ​多くの人と乗り合わせながら、孤独で自由なひとりの人間にもどれるのが通勤電車。​​
​​ ​​​​​​​表紙の裏に、そんなうたい文句が書いてあるのを読みながら、朝、夕の電車通勤をしなくなって30年以上の歳月がたったことに気付きました。
 ボクにとって通勤電車の思い出は、勤め始めたのころにJR西明石駅から六甲道駅の間を通っていたころに始まって、神戸の地震があったころ、市営地下鉄学園都市から上沢駅まで通っていたころまでの十数年間です。​​​​​​​

​​​ その後、仕事をやめるまでの二十年ほどは原付通勤でしたから、通勤電車「孤独と自由」の中で、スポーツ新聞やコミック週刊誌を読んだり、仕事とは関係ない読みかけの本を開くという体験は、40代の終わりころに終わっていたのだというのは、なんだか、ちょっとショックでした。そういえば週刊のマンガ雑誌を読まなくなったのも、その頃でしたね(笑)。​​​
 表紙にはこんなキャッチコピーも貼られています。
​​​「次の駅までもう1篇。足りないのは、詩情だった。」
​​ ​ウーン、​詩情ねえ(笑)。でも、まあ、ボクの場合、詩集を読んだりしたことはいちどもなかったような気がしますけどね(笑)。​
 それにしても、電車で運ばれるという経験は、改めて考えると、実に面白い。
わたしたちは、どこかへ行くためにその途上の時間を、見知らぬ人と共に運ばれる。電車が走っている途中は無力であり、降りたいと思っても簡単には降りられない。あがいても、次の駅まで運ばれていくだけだ。
 移動あるいは途上の時間は、目的地に着いてしまえば、消えてなくなる。それはこの世のどこにも根を下ろさない、不思議な間(ま)としか言えない時間である、しかもその時乗り合わせた人々とは、おそらく再び会うことはないだろう。そんな人々とひととき、運命を共にする。
 このことには、どこか人間の生涯を、圧縮したような感覚がある。(P15)
 まあ、週休1日、ある時期から週休2日のお勤めでしたから、​​​​​1年間に、600回くらいの電車の旅があったわけで、サンデー毎日徘徊老人には、ちょっと目が眩みそうな記憶ですが、ですか?読まなかったなあ。でも、なるほどなあ、という気もしますね。
 とはいうものの、出かけることのない老人には、座りこんでボンヤリする某所での読書にうってつけでした。まあ、詩情が必要な場所でもないのですが、所用時間が適当なのでしょうね(笑)。​​​​

で、どんな詩が載っているのかということですが、目次を載せてみますね。
目次
朝の電車
「うたを うたうとき」(まど・みちお)「フェルナンデス」(石原吉郎)「イタカ」(コンスタンディノス・ペトルゥ・カヴァフィス)「少女と雨」(中原中也)「緑」(豊原清明)「胸の泉に」(塔和子)「宇宙を隠す野良犬」(村上昭夫)「森の奥」(ジュール・ショペルヴィエル)「いつ立ち去ってもいい場所」(谷川俊太郎)「ばらあど」(ガブリエラ・ミストラル)「春の芝生の上に」(趙明煕)「九才」(川田絢音)「言語ジャック」(四元康祐)​「からたちの花」(北原白秋)

午後の電車

「アドルストロップ」(エドワード・トマス)「川が見たくて 盛岡・中津川」(高橋睦郎)「四十五歳」(ヘイデン・カルース)「見えない木」(エドワード・トマス)「洛東江」(崔華國)「滝のある山」(中本道代)「緑の導火線を通して花を駆り立てる力」(ディラン・トマス)「孤独な泳ぎ手」(衣更着信)「ぼくの娘に聞かせる小さい物語」(ウンベルト・サバ)​「しずかな夫婦」(天野忠)​「母の死」(草野心平)「賀状」(長田弘)「雪、nobody」(藤井貞和) 

夜の電車

「駅へ行く道」(山本沖子)「池(pond)」(白石かずこ)「昨日いらつしつて下さい」(室生犀星)「犬を喰う」(金時鍾)「眼にて云ふ」(宮沢賢治)「家」(石垣りん)「ぼくは聞いた」(パウル・ツェラン)「記憶」(小池昌代)「会話」(ルーシー・タパホンソ)「遺伝」(萩原朔太郎)「ひとつでいい」(トーマ・ヒロコ)「踊りの輪」(永瀬清子)「週電車の風景」(鈴木志郎康)「わたしは死のために止まれなかったので」(エミリー・ディキンソン)
​​ ​​​​​​​これで、全部です。41篇ですね。ボクでも知っていた詩が3割程度、ほかのですが、読んだことのある詩人が6割くらい、だから、詩としては、ほぼ、知らない詩ばかりでしたが、読んで意味不明の作品はありませんでした。ページの終わりに記されている小池さんの一言紹介で、ふーん、そうか、という場合もありましたが、おおむね、誰にでも理解可能な詩篇でした。​ ああ、それから、この詩集池澤夏樹「いつだって読むのは目の前の1冊なのだ」(作品社)​の2009年10月15日読書日記で紹介されています。​​​​​​​​
 編者のセンスをそのまま反映するいいアンソロジー、通勤電車でよむという仕掛けも気が利いている。まず立ち読みで四元康祐言語ジャック1新幹線・車内案内という1篇でも読んでみるといい。これはすごいよ。
 ​​​​まあ、こんな紹介ですが、​​四元康祐さんの詩、気になるでしょ。まあ、それはおいおい紹介しますが、今日は小池さん自身の詩を引用してみますね。​​
   記憶    小池昌代

オーバーをぬいで壁にかけた

十年以上前に錦糸町で買ったものだ

わたしよりさらに孤独に
さらに疲れ果てて
袖口には毛玉
すそにはほころび

知らなかった
ひとは
こんなふうに孤独を
こんなふうに年月を
脱ぐことがあるのか


ひどい、急ぎ足で
駅へ向かうこのオーバーを見たことがある
おかえり

それにしても
かなしみのおかしな形状を
オーバーはいつ記憶したのか
わたし自身が気づくより前に
 このオーバーとは長い付き合いだった。いよいよだめになって捨てるとき、古い自分を捨てるようにすっきりした。感傷なんか、まるでなかった。冬の朝晩は、これを着て通勤。電車のなかで、よく詩集をよんだ。(P150~P153)
​ ​やっぱり、電車で、を読む人だったんですね。​
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最終更新日  2023.12.05 09:50:13
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