北原白秋「からたちの花」(小池昌代「通勤電車でよむ詩集」より) からたちの花 北原白秋
からたちの花が咲いたよ。
白い白い花が咲いたよ。
からたちのとげはいたいよ。
青い青い針のとげだよ。
からたちは畑の垣根よ。
いつもいつもとおる道だよ。
からたちも秋はみのるよ。
まろいまろい金のたまだよ。
からたちのそばで泣いたよ。
みんなみんなやさしかつたよ。
からたちの花が咲いたよ。
白い白い花が咲いたよ。
小池昌代さんが編集した「通勤電車でよむ詩集」(NHK生活人新書)の「朝の電車」の章の最後に載せられていました。
北原白秋といえば、たとえば、「あめあめふれふれかーさんが♪」の「あめふり」とか、上に載せた「からたちの花」とか、ボクたちの世代ならだれでも鼻歌で歌える童謡の歌詞の人ですね。
で、小池さんは童謡の歌詞であるこの詩を、詩として読んで「からたち」の白い花のそばで泣いている人の
「泣いた理由は何だったんだろう?」
と問いかけていらっしゃるわけですが、とがめだてるわけではもちろんありませんが、そんなことを朝から考え始めると、次の駅で降りそこねてしまうんじゃないでしょうか(笑)。
で、まあ、繰り返しになりますが、北原白秋といえば、短歌で出発した人というのが、高校の国語のパターンです。下に引用した「春の鳥」の歌が教科書の定番で、「桐の花」という白秋の最初の歌集の冒頭の歌です。引用した作品は最初期の歌が多いですが、確認し忘れていますから、そのあたりはご容赦ください。
春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕
かなしきは人間のみち牢獄(ひとや)みち馬車の軋みてゆく礫道(こいしみち)
ひなげしのあかき五月にせめてわれ君刺し殺し死ぬるべかりき
病める子はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑ばたの黄なる月の出
石崖に 子ども七人こしかけて河豚をつりおり 夕焼け小焼け
草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝て削るなり
秋の色 いまか極まる聲もなき 人豆のごと橋わたる見ゆ。
君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ
まあ、興味の方向は人それぞれですが、獄中歌らしきところに目がいってしまうのは、個人的な傾向にすぎませんのであしからず(笑)。