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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
鈴木清順「陽炎座」元町映画館 「SEIJUN RETURNS in4K」という特集の三本目です。見たのは、「陽炎座」です。泉鏡花の小説の映画化だそうですが、読んだことはあるはずですが忘れました。映画もほぼ忘れていたのですが、ラストシーンだけ覚えていました。
面白いものですね、「ツィゴイネルワイゼン」、「夢二」と ポカーン2連発! だったのですが、これは ドスン!ストライク! でした。 まあ、なにが、どうストライクなのかというと、判然とはしないのですが、たぶん「人形」ですね。浄瑠璃の人形、焼き物の人形、そのあたりと、なんだか濃すぎる登場人物たちとのギャップですね。 小野小町の歌がそこはかとなく響く中、ポコポコと湧いてくる魂の形象であるらしいオレンジ色のピンポン玉のような球体のリアリティが目に焼き付いていくかのラストは、やっぱり忘れられなくなりそうですね。 やっぱり気になって調べた鏡花の陽炎座にこんな一節がありました。 夢と言えば、これ、自分も何んだか夢を見ているようだ。やがて目が覚さめて、ああ、転寐(うたたね)だったと思えば夢だが、このまま、覚めなければ夢ではなかろう。何時いつか聞いた事がある、狂人と真人間は、唯時間の長短だけのもので、風が立つと時々波が荒れるように、誰でもちょいちょいは狂気だけれど、直ぐ、凪になって、のたりのたりかなで済む。もしそれが静まらないと、浮世の波に乗っかってる我々、ふらふらと脳が揺れる、木静まらんと欲すれども風やまずと来た日にゃ、船に酔う、その浮世の波に浮んだ船に酔うのが、たちどころに狂人なんだと。 鏡花の主人公は出家ですが、映画では劇作家松崎春狐を演じた松田優作もよかったですね。早く亡くなったこともあって、伝説のように語られる俳優です。ただ、ボク自身は松田優作がそれほどいいと思っていたわけではないのですが、この作品のあやふやな存在感というか、夢に取り込まれていく人形ぶりというか、バランスの悪いニーチャンぶりというかが、中村嘉葎雄や原田芳雄のインチキぶり、とどのつまりは大友柳太郎ですが、まあ、それはそれで拍手!なのですが、その、お三人とのせめぎ合いを、見事にしのいでいましたね。拍手!拍手!でした。 で、このシリーズは、これまたなつかしいのですがタイトルロールが最初に流れるのです。で、そこに沖山秀子を発見してドキドキしましたね。ボクの生涯で、口をきいたことのある唯一の女優さんです。70年代の半ばですが、バイト先のピアノ・バーに、足を引きずりながら出没して、時には歌っていらっしゃったんですね。あのころ、とてつもない存在感でしたが10年ほど前にお亡くなりだったようです。で、この映画のどこにいらっしゃったかというと、最後の方にちらっとだったと思いますね。 うたたねに恋しき人を見てしより夢てふ物はたのみそめてき 映画で、繰り返し口ずさまれる歌ですが、ボクにとっては、時の流れの遠い向うにある、恋しきものが、まあ、その正体は映画そのものではなかったのかもしれませんが、ポコポコと浮かび出てくるかのような作品でした。ためらった3本目でしたが、見てよかったですね(笑)。 監督:鈴木清順 原作:泉鏡花 脚本:田中陽造 撮影:永塚一栄 美術:池谷仙克 音楽:河内紀 キャスト 松田優作(松崎春狐) 大楠道代(玉脇品子) 加賀まりこ(みお) 楠田枝里子(イレーネ:イネ) 中村嘉葎雄(玉脇男爵) 大友柳太朗(師匠) 麿赤児(乞食) 原田芳雄(和田) 沖山秀子(着物の女) 江角英(執事) 東恵美子(老婆) 玉川伊佐男(番頭) 佐野浅夫(院長) 佐藤B作(駅員) 1981年・139分・日本 公開1981年8月21日 2023・12・04・no148・元町映画館no216 ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.07 23:25:11
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