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カテゴリ:読書案内「現代の作家」
乗代雄介「最高の任務」(講談社・講談社文庫)(その1) ここのところ、乗代雄介という、1986年生まれらしいですから、37歳の寅年、我が家の愉快な仲間の3番目のカガククンと、たぶん同い年の作家に、ちょっとはまっています。
始まりは、2023年の、第169回芥川賞の候補になって落選したのですが、その後、織田作之助賞とかをとった「それは誠」(文藝春秋社)を読んだところからです。 で、すでに案内しましたが、2020年に芥川賞に落選しながら三島由紀夫賞、坪田譲治文学賞を連取した「旅する練習」(講談社文庫)を読んで、今回は「最高の任務」(講談社文庫)です。 「最高の任務」(講談社文庫)には「生き方の問題」と「最高の任務」という二つの作品が入っているのですが、そのうちの「最高の任務」は2019年、乗代雄介が初めて芥川賞にノミネートされ、その後の 芥川賞4連敗!の始まりの作品です(笑)。 落選し続けている作家の作品を、なぜ追いかけて読んでいるのか? まあ、そういうふうに尋ねられそうですが、面白いからですね。何が面白いのかというと、「作家の方法意識」です。 あからさまなのですね(笑)。 たとえば、「旅する練習」では、姪と歩いた旅を作家である叔父が記録しているという設定でしたが、この作品集にある「生き方の問題」の書き出しはこうです。 歴史を遠ざけよ。同時性の状況に立つのだ。これが基準である。私が同時性を基準にして物事を裁くように、私もまた裁かれるのである。背後に流れる無駄話はすべて幻想だ。 ご覧のように、この作品は「僕」が、父方のいとこの「貴子さん」にあてた手紙です。単行本で、ほぼ90ページ、全文、 一通の手紙! です。ボクがあからさまな「方法意識」と呼んだのは、とりあえずそういう書きかたです。 ハテナ? の答も複数化するはずですね。 で、授業では「覚悟」とか「精進」とか、登場人物の、哲学的、宗教的、人間性を象徴するような「ことば」にこだわって 「知ってるか? わかるか?」 と、いたいけな高校生を脅す方が多いのですが、そんなことより、死ぬ前になって「ある人間」が、なぜ手紙を書くのか、なぜ、その場面、あの場面を(いろいろありますが)思い出すのか、そしてそれを書かねば気がすまないのか、という、人間の記憶、あるいは、生きてきた時間に向き合っている態度に対する興味は、高校生にだって、案外、リアルで、そうなると、作家が、何故、登場人物にその場面を思い出させるのかという問いをも成立するわけで、教室も盛り上がって、なかなか面白かったのですが、この作品も、まあ、そういうことをあれこれ思わせて面白いというわけです(笑)。 いいお話でした! という後味でしたがね(笑)。それでいいのかなと思わないでもないのですよね(笑)。で、次は表題作の「最高の任務」ですが、それはその2に続きます(笑)。また読んでね(笑)。 追記 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.03.03 18:53:06
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