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カテゴリ:映画「ちょっと遠くの映画館」でお昼寝
ジェームズ・ホーズ「ONE LIFE」キノシネマ神戸国際 70歳の誕生日を過ぎて、まあ、
「年齢なんてものは生きていれば誰にでもやってくるものだ。」 といってしまえばそれまでのことなのですが、そうはいっても、ただでさえ宵っ張りで、夜中の2時とか3時とかに寝床に入ってみると、誰彼なしに、とはいいながら親とか親族とかは、何故か出てこないのですが、ここ二十年ほどの間に亡くなった知人の方々の顔が浮かんできて、ボンヤリ、夢のような記憶のようなものの相手をしていると、カーテンの外が白んできたりしていることに気付いたりするわけで、そのあたりで、ようやく寝付くようで、結局、朝寝して9時とか10時とかに起きだす6月でした。 映画を見るとかと何の関係もないことを、ウダついていますが、要するに、 問題は、老いと死ですね。 今日見たのはアンソニー・ホプキンスの新作「ONE LIFE」でした。監督はジェームズ・ホーズという人で、まあ、見る人が見れば 「すでに、シンドラーのリストがあるじゃないか!」 ということかもしれませんが、イギリス版シンドラー、ニコラス・ウィントンという人の老いを演じた86歳のアンソニー・ホプキンスに釘付けでした。 時は、1980年ころのイギリスです。いまだに募金活動とかがやめられないニッキーという老人がいて、厳しい妻から散らかし放題の書斎の片づけを迫られています。いわゆる終活ということのようですが、机の引き出しにしまわれていた書類カバンと、その中にしまわれていた1冊のスクラップブックが、老人の記憶を揺さぶり始めます。 古びたスクラップブックには、何人ものこどもの顔写真が貼られていて、×マークのチェックが付いたものと、何の印もついていないものがあります。女の子も男の子もいます。 子どもたちの顔が、分厚い老眼鏡越しに写真に見入る老人を、50年近く昔の、あの日の、あの街へ連れて行って、物語が始まりました。 ナチスの侵略を目の間にしたチェコスロバキアから、子供たちだけでもイギリスに避難させようと思いついた、若き日のニッキーに対して、子供たちをはじめ、地区のユダヤ人の動向を把握しているユダヤ教のラビと思しき老人が 「あなたのような、普通の人が、なぜ、こんなことをしようと思いついたのか?」と尋ねるシーンで、無鉄砲で、いかにも世間知らずな青年が答えた言葉が応えました。 「ぼくは、普通の人間だからです。」で、思いつきのように飛び出して行った息子からの旅先のチェコからの電話で、子供たちのビザの発給の手続きを依頼された母親が、彼女を門前払いする、移民局の役人に対して 「私は、先の大戦の時にドイツからイギリスへ逃れてきた人間です。子どもはイギリスで育てました。その子供が、今、チェコで困っている子供をイギリスに匿いたいと活動しています。これこそイギリスが誇るべきことではありませんか?この子供たちのイギリス入国のビザ発給に協力してください。」 という、見事な論陣を張り、説得に成功するのですが、 この母ありて、この子あり!の感動もさることながら、20世紀初頭のヨーロッパの「国境」の意味というのでしょうか、ナショナリズムとインターナショナルのせめぎ合いの、まあ、正か負かの判断はともかくも、その一面を如実に見せられた気がして 「これがヨーロッパか?!」 と改めて思い知る気がしました。 映画は「普通に生きて来た」一人の老人と、彼を支える厳しい?(笑)配偶者という老夫婦が、 「普通に生きてきてよかったですね!」拍手!、拍手!というべき過去からのプレゼントに囲まれるというハッピィー・エンディングでしたが、まあ、ただの普通ではないところが、ただのワン・ライフではないという物語なのでした。 なにはともあれ、 人として「普通」であること の意味を、正面から突き付ける作品で、胸に残りました。何番煎じでもいいじゃないですか、やっぱり、何度でも考え続けないとね、まあ、そういう気持ちになりましたね(笑)。 老人を演じる老優、アンソニー・ホプキンスがプールで泳ぐのですが、その胸の厚さに仰天した作品でもありましたよ(笑)。 主演の彼はもちろんですが、出てくるみなさんに拍手!でした。 監督 ジェームズ・ホーズ 脚本 ルシンダ・コクソン ニック・ドレイク 撮影 ザック・ニコルソン 美術 クリスティーナ・ムーア 衣装 ジョアンナ・イートウェル 編集 ルシア・ズケッティ 音楽 フォルカー・ベルテルマン キャスト アンソニー・ホプキンス(ニコラス・ウィントン) ジョニー・フリン(青年時代のニコラス) レナ・オリン(母・グレーテ・ウィントン) ロモーラ・ガライ(ドリーン・ワリナー) アレックス・シャープ(トレヴァー・チャドウィック) マルト・ケラー(ベティ・マクスウェル) 2023年・110分・G・イギリス 原題「One Life」 2024・06・25・no080・キノシネマ神戸国際no10 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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