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カテゴリ:映画「元町映画館」でお昼寝
松倉大夏「ちゃわんやのはなし」元町映画館
予告編を見て、3冊の本を思い出しました。3冊とも、20年ほど昔に読んだ本です。 1冊目は司馬遼太郎の「故郷忘じがたく候」(文春文庫)、2冊目が村田喜代子「龍秘御天歌」(文藝春秋社・文春文庫)、そして3冊目が李鳳宇と四方田犬彦の対談集「パッチギ 対談編」(朝日新聞社)です。 まず、3冊目の「パッチギ」ですが、この映画が李鳳宇の企画だということに気付いて、 「あっ、パッチギのニーチャン、まだ、映画作ってんねや!」 と、ちょっと嬉しくなったからです。 で、2冊目の「龍秘御天歌」は、確か有田焼の窯元のオバーちゃんを主人公にした話で、1冊目の「故郷忘じがたく候」は、今、といっても、まあ、50年前の今ですが、司馬遼太郎が薩摩焼の陶工を訪ねた話だったなという、それぞれ、20年ほど昔に読んだ記憶との遭遇体験でした。 実は、ボクは、その2冊の読書で、唐津焼、有田焼、薩摩焼、萩焼と、普通に呼んでいる陶器や磁器である焼き物が、秀吉の朝鮮出兵によって連れ帰られた朝鮮の陶工たちによって創始され、以来、作り続けてこられたということを初めて知って 「おおー、そうなんだ!すごいじゃないか!」 と、文字通りカンドーしたわけで、予告編を見ながら、なんだかわけのわからないまま、その時のカンドーがぶり返して、 「これは、見るぞ! 登り窯も見たいし!」と、最近では珍しく、ちょっと前向きに決意して見ました。 見たのは松倉大夏監督のドキュメンタリー、「ちゃわんやのはなし」でした。 納得でした。だいたい、題名がいいですよね(笑)。 薩摩焼の十五代沈壽官、萩焼の十五代坂倉新兵衛、田川の上野(あがの)焼の十二代渡仁、出ていらっしゃった陶工の皆さんですが、特に、薩摩焼の沈壽官というお名前には覚えがありました。司馬遼太郎が出会って、上記の本に書いていたのがそのお名前でしたが、十四代でした。50年の時がたったのですね。 映画は、朝鮮出兵の歴史から語り始め、やがて、十五代沈壽官さんが語り始めます。朝鮮人なのか日本人なのかの葛藤。韓国での修業時代の苦労。父との断絶。父と息子を支え続けた母。 映像の話に聞き入りながら不思議だったのは、語り続ける沈壽官さんに、功成り名をとげた人の鬱陶しさがかけらもないことでした。 で、最後は登り窯でした。窯を焚きながら、1200度をいかに超えさせ、1280度の温度をいかに作り出し、維持するかの経験を伝承しつつある沈壽官父子の姿は灼熱地獄でたがいに気遣いながら働くオヤジと息子でした。スゴイですね。 焼き上がった黒薩摩の椀をふきながら 「この色が好きなんですよね。」 とおっしゃった、はにかんだような笑顔に思わず頷いてしまいました(笑)。 松倉大夏監督、穏やかで、いい味のドキュメンタリーを撮りましたね。拍手!です。やたら二ホン文化のオリジナリティーとかを煽りたがる時代ですが、 こういう作品こそ! という気がしました。 追記2024・08・10 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.09.27 11:45:29
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