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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2024.10.25
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​ヌリ・ビルゲ・ジェイラン「二つの季節しかない村」シネリーブル神戸​
 40年近く学校というところで働いてきたからでしょうか、学校が舞台で、なおかつ、教員と生徒、教員と教員のやりとりとかでドラマが構成される映画は苦手です。生徒さんはともかく、同僚とか、上司とか、もう、思い出すのもイヤかもしれません(笑)。
​​​ まあ、そうはいいながらも
​そうはいってもトルコとかやし!​
 ​とか思って見に来たのがヌリ・ビルゲ・ジェイランという監督の「二つの季節しかない村」でした。​​​
 一面、雪の広野の真ん中にバスが止まって、一人の乗客が下りて、どっちかわからない方に向かってあるきはじめます
​​​​​ トルコの東部、アナトリアという地方にあるインジェス村という田舎の村の学校が舞台だそうですが、世界地図を思い浮かべても何も浮かんできません。薄暗く、白い映像に、人の踏み跡でつけられた道は、ボクにとっては、この映画で
​一番印象的!​​
 ​といってもいいシーンでした。​​​​​
​​​ ボクは兵庫県の北部の山間部の育ちですが、こういう薄暗い雪道は記憶にありますね。ただ、ボクの記憶では、すぐそこに山があって、深く積もった雪にかぶさるように山そのものの暗さが迫って来るのですが、映画のシーンには途方もない遠さ、広さのイメージが広がっていて、
​これがトルコか!?​​
でしたね。​​​
 ​198分の映画の始まりです。​
​​​​​ 雪の中を歩いていたのがサメットくんでした。年齢は40歳を越えているとしか思えません。村の学校、日本でいえば小学生から中学生に当たる年齢の子供たちが通う学校の美術の教員で、担任をしていました。​​
​​「尊大で狭量」​​
​​とチラシに書かれている男ですが、この男の姿を映し続ける映画を見終えていえることは、
​​「なんだか、疲れました。」​​
​​​​​ ですね。
​​ 何故、疲れたのか。いろいろ書くのはめんどうなのでいってしまいますが、まず、サメットくん
​​その年頃のわたし自身だった!
​ と感じたからじゃないでしょうかね。​​
​​​​​ もちろん、女生徒にこっそりコンパクトを贈ったり、リベラルな女性教師を口説いたり、教室で気分任せの権力を振り回したりした経験があるわけではありません。しかし、「教育」という現場にいながら、現場にいるからこそ、リアルに認識しているはずの社会に充満している「虚偽」について、正面から向きあうことをどんどん迂回していきながら、自己正当化の穴倉の中の開き直りに至り着き、自己弁護の末に
​「イスタンブールに転勤したい」​​
​ という、現実逃避の姿は、ある時期の「私自身」を思い浮かべましたね。​​​​​
​ もちろん、現場で、そんなことを口にしたことはありませんし、誰かとそういう論点で言い争ったこともありません。だまって、40年勤めました。この映画の感想で、こんな事を書くのは、家に帰って、いろんなレビューを見ていると、サメット君が、この映画を見た世間の人たちからボロクソに言われているのを見たからということもあります。​
​​ 確かに、ヌライさんのような生き方もあります。しかし、世の中の多くの方はサメット君を小馬鹿にすることが出来る生き方をなさっているのでしょうか?​​
​​​​ ヌリ・ビルゲ・ジェイランという監督は、どうもただものではありませんね。この映画を見ながら
​​「サメットはあなただ!」​​
 ​というメッセージを感じたりするのは、ボクだけかもしれませんが、映画の、終わりになって、降りしきる雪の中の女生徒セヴィムちゃんのクローズアップ、そうです、上のチラシの写真のシーンが映し出されてきたときに、ギョッとしました。​​​​
​​ 旧弊な、田舎社会のなかで、似非インテリの教員が、いわば、その旧弊さに無批判にのっかって、ノホホンと胡坐をかきながら自己弁護に気を取られ、ただの気まぐれで、その実、横暴な教員として、我が儘な権力を振り回している教室でセヴィムちゃんは大きくなるわけです。彼女たちに未来はあるのでしょうか。
​​​​​ 降りしきる雪の中の彼女の姿が、見ているボクに訴えかけるものは希望ではなくて絶望だったところが、この監督の凄さだと、ボクは思いました。拍手!​​​​​​

 映画トルコの果ての村の話でしたが、30数年の教員暮らしで見てきた世界そのものなのですから、そりゃあ、疲れますよね(笑)。他人ごとだとサイラス君の悪口なんかいってられませんからね(笑)。
 
監督・製作・脚本・編集ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本  エブル・ジェイラン アキン・アクス
撮影 ジェバヒル・シャヒン キュルシャット・ウレシン
編集 オウズ・アタバシュ
音楽 ジュゼッペ・ベルディ
キャスト
デニズ・ジェリオウル(サメット:美術の教員)
メルベ・ディズダル(ヌライ:町の学校の英語の教員)
ムサブ・エキチ(ケナン:同僚)
エジェ・バージ(セヴィム:女生徒)
エルデム・シェンオジャク(トルガ:同僚)
ユクセル・アクス(ヴァヒト:獣医)
ミュニル ジャン・ジンドルク(フェイヤズ:飲み屋のおやじ)
オヌル・ベルク・アルスランオウル(ベキル校長)
ユルドゥルム・ギュジュク(教育部長)
ジェンギズ・ボズクルト(ナイル)
S・エムラ・オズデミル(軍曹)
エリフ・ウルセ(サイメ副校長)
エリト・アンダチャム(フィルデヴス)
ナラン・クルチム(ケヴセル)
フェルハト・アクグン(アタカン:カウンセラー)
エイレム・ジャンポラト(ハリメ)

2023年・198分・G・トルコ・フランス・ドイツ合作
原題「Kuru Otlar Ustune」英題「About Dry Grasses」
2024・10・14・no134・シネリーブル神戸no274






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追記
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最終更新日  2024.10.28 00:05:38
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