アーティスト
★★★★☆あまりに完璧なモノを与えられつづけると、投げかえせなくなっちゃうのかもしれない。それは、子供の玩具に似てる。意外に何もなくても、子供ってそこらへんのものでうまく遊ぶものです。棒切れや木の実なんかでいろんなことを「イメージ」して。今の多くの映画がゲームソフトなんだとすれば、チャップリンなんかの映画はさしずめベーゴマとかかな。「アーティスト」は…よく考えられた知育玩具、ブロックか木の玩具という感じ。「アーティスト」の劇場鑑賞体験は、私にとってかなり強烈だったのかもしれません。日が経ってもじわじわと静かな興奮が持続してます。私のなかに大きくなっているのは、主要登場人物たちよりむしろ、映画の中で映画を観ていた観客たちかもしれません。セリフも色もない、今よりずっと粒子の粗い画面を眺めて、観客たちは冒険の旅に出たり恋をしたりしていた。全員少しづつ描くイメージは違うはずなのに、同じところで泣き、怒り、笑い、生の芝居を見ているみたいに感情を表現している。昔の映画はまだまだ足りないところだらけだったけど、その中で精一杯表現してたところがエライ観客も、いい作品を心から求めていて、その心とつくりての心が通いあっていたように思う。「アーティスト」を観ると、そんな時代の観客にふとすごく近付けたように思い、それはとても幸せな感覚なのでした。