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カテゴリ:読書
今世間では3連休です。皆さん、どこかへお出掛けでしょうか。
私は今日、お昼前から実家に行ってきました。風の強い一日でしたね。 実家へ行っても、一日中家の中でのんびりしていただけの一日です。 今の私からは、一番遠い世界を描いた本「愉楽の園」を読みましたので、ご紹介致します。 タイ・バンコクで、王家の血をひく内務省高官、サンスーン・イアムサマーツの愛人として3年間暮らしていた藤倉恵子の前に、日本人旅行者・野口謙があらわれる。 世界中を旅した野口が、それまで見た風景、人間。 なぜか色を失い、表情を隠し、心のどこかに潜り込んで出てこなくなってしまう・・・それは「バンコクの魔法」であるのだそうだ。 タイでは、媚薬みたいなものが立ちこめている。車の排ガス、オートバイの音さえもその子分の働きをしてしまう。バンコクの暑さは、熱湯のような熱さである。と書かれていますが、バンコクに魅了された経験のある私は、うなずいてしまうことばかりであった。 そこにホテルのボーイ・テァンとその母?マイ。 サンスーンのボディガード・エカチャイと小説家のチラナン、新聞社の駐在員・小堀秀明とホテル黄金旅社の経営者スワンニーも、絡んできます。 読者の期待通り、バンコクで恋に落ちた男と女、恋のときめき、その心の揺れ動き、官能に満ちた世界を、小説家・宮本輝は、力量を持って描ききっています。 チラナンは「仏像の背中」を書き上げて、自ら死を選ぶ。 その小説を自分が書いたものとして世に出すサンスーンとの結婚を、ダムナーンサドウックの水上マーケットの働く女達の中で一度は決意する恵子であったが。。。 ヒロインは最後の最後まで迷って日本に帰ることを決意するのです。 恵子が、野口・テァンと出会うのはバンコクオリエンタルホテル。 世界のいたるところに「向こう側」と「こちら側」がある。 けれども、タイという国は、ことのほか「向こう側」と「こちら側」の境界が遠く、その境界をなすものは運河であると恵子は知るのです。 最後に帰国を決意するヒロインに意外性はありません。 そこまでの迷いのプロセスを楽しむことの出来た作品でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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