誕生日
もうすぐ古希を迎える。子供が物心ついて、プレゼントをくれるようになってから、どのくらいになるのだろうか。毎年の誕生日サプライズには、小躍りをしているわたしであるけれど、中でも印象に残ったプレゼントは二つあった。その一つに、デロンギエスプレッソカプチーノメーカーがあった。二人の娘達がお年玉を貯めて、買ってくれたのだ。日頃からコーヒーが大好きで、中でもエスプレッソが好きだったから、このマシーンを選んでくれたのだろう。その日は朝から雪花が散らついていた。二人でなんだかこそこそしているなぁと思いながら、出かけると言う子供達を玄関に送り出した。夕暮れ前に大きな箱を抱えて戻って来た二人は、耳まで真っ赤にして、かじかんだ手に息を吹きかけていた。「寒かったね。何を買って来たの?大きな箱だねぇ」と覗き込むと、エスプレッソカプチーノメーカーだった。思わず持ち上げてみると、ずっしりと重かった。わたしを喜ばせようと、子供の足では20分も掛かる駅前の家電店へ行って来たのであった。「ありがとう。重くて大変だったでしょう?」何度も二人の頭を撫でた。「母さん、もう一つあるよ。ピンポンが鳴ったら出てね」と言われて玄関に出てみると、大好きなカサブランカの花束が、商店街の花屋から届けられた。まだまだ子供だと思っていたのに、こんなサプライズが出来るなんて!子供達の成長ぶりに、わたしは嬉しくて感動した。確か長女が小学四年生で次女は小学三年生だった。そのプレゼントは大事に使っていたのだけれど、いく度目かの引越しで捨ててしまった。でも、わたしの心の中には、思い出深いプレゼントとして、今も刻まれている。