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カテゴリ:里山の生き物たち
猫の恋路を邪魔するものは… チュウが外出してから、かれこれ一月になりました。 五年前の4月に生後一ヶ月で我が家に来た黒猫ですから満四歳の成猫で青春真っ盛りというところでしょうか。 去年辺りから春になると頻繁に外出するようになりました。 それでも外泊は長くて三日程度で、出入口の窓に現れては 「ニャオー」 窓を開けろと催促していました。 ところが、先々月のことになりますが二週間しても帰ってきません。「おーーい チュー!」と朝晩、雪を被る山に向かって声をかけました。 朝の五時頃でしたでしょうか、いつもよりも元気のない声で 「ニャォ」 と声がしました。全体にやせ細り、特に腰の辺りがペタンとへこんいます。それから十日ほどは一日中、食べては寝が続いたでしょうか、漸くもとの元気なチュウに戻ると、またに二泊三日の外泊が始まりました。 ある日のこと、前の山を「ニャオ!」と言いながら帰ってきました。ちょうど犬の散歩を終えて帰ってきたところです。「ハーイ」と応えると「ニャーオ!」、「ハーイ」「ニャーオ!」 いつも「ハーイ」と応えると安心するように声に向かって駆け寄ってくるのです。 ところが途中で 「ニャヒャァア!!」という別の猫の声がしました。お隣の前の家の持ち主が飼っていた三毛猫の声です。するとチュウが帰って来た道を引き返し始めました。「オーイ チュウ! チュー どうした オーイ」 声はすれども姿が見えない三毛猫の近くに行って追い払い 「チュー チュウ!」と声かけをしても、そのまま山の中に消えていってしまいました。 二、三ヶ月前のこと、朝起きるといつも居るチュウがおらずリビングの窓があいたままでした。窓を中からは自分で開けられるので、ここまでは普通なのですが、ちょっと様子が変です。ものが散乱して争ったような様子で黒と茶色の毛が落ちています。無頼の三毛がチュウの部屋に押し入ったような形跡です。 実は、その数日前に大きな柿の木の梢の先端にチュウが追い立てられ、その下の太い梢で悠然と三毛がふんぞり返っているのを見かけました。前は喧嘩しても負けなかったのに形勢が逆転しています。どうやら日毎、恋人との逢瀬に明け暮れて疲労困憊で帰ってきたところで三毛とやりあって負けたのでしょうか。それが高じてチュウのテリトリーの部屋にまでちん入してきたようなのです。 そういうこともあって、もしかしたらテリトリーを奪われてしまったと思い、帰ってきた道をすごすごと戻って行ったのでしょうか。その姿が寂しそうで、哀れで、悲しそうでした。追いかけましたが素早くて、もう姿が見えませんでした。 それから数日後のことです。下の町に買い物に出かけた時のことです。黒い猫が車の脇をよぎりました。もしやチュウでは?見るとトレードマークの赤い首輪がついています。 「おお! チュウ! チュウ!」と声をかけました。立ち止まって、こちらを見ました。ところが、そのすぐ横に可愛らしい猫がいるではありませんか。雌猫のようです。雌猫と顔を突き合わせています。移動すると、それに合わせるように移動します。なーんだ恋人かぁ。 人の恋路ならぬ猫の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて…じゃないが無粋なことはやめにして恋が成就すれば戻ってくるな、と思ったのが迂闊でした。 かれこれ一月になりますが、まだ戻ってこないのです。チュウを見かけた処に行ってはチュウ!と声を掛けるのですが出てきません。村の人は「そのうちに帰ってくるよ」「見かけたら連絡すっから」と言ってくれるのですが、未だなしのつぶてです。 車にひかれたのではないかといらぬ心配をしてしまいます。連れ合いは、「チュウはお利口さんだから大丈夫!後を追いかけてくる時も道端を歩いてくるし心配ないわよ」「もしかしたらネコ好きな優しい人が可愛がってくれて、居心地が良くてしばらく留まっているんじゃないの」と言ってくれますが、心配な日々が続きます。
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