米澤穂信 『夏期限定トロピカルパフェ事件』
この夏の運命を左右するのは〈小佐内スイーツセレクション・夏〉。いつか小市民の星を掴みたいと願う小鳩君は、依存関係でも恋愛関係でもない互恵関係にある小佐内さんと街中の素敵なスイーツをめぐるハメに陥った。だが、どうもこのスイーツめぐりは・・・ 小市民シリーズ第2作。雑誌「ミステリーズ!」に掲載された短編「シャルロットだけはぼくのもの」「シェイク・ハーフ」を1章、2章として含む連作短編集、というか長編。 シリーズ前作『春期限定いちごタルト事件』がどちらかといえば甘い日常の謎だったのに対し、今作『夏期限定トロピカルパフェ事件』はその路線を踏襲した感のある前半、そして衝撃の結末へと続く後半といった構成で見事に驚かせてくれました。 「シャルロット~」は小鳩君と小佐内さんのやりとりが楽しい倒叙もの、「シェイク・ハーフ」は小鳩君の親友健吾が残したメッセージを四苦八苦して読み取るダイイングメッセージもの(というよりも暗号もの?)で、どちらも日常の謎の本格推理として満喫できるのですが、やはり最後の大事件が見もの。イマイチ不自然な発端からなんとなく真相を想像していたのですが、それを上回る真相です。まさに驚愕。さりげない伏線の収束がこんな形になるとは。 それにしても黒い、黒いですよ小佐内さん。こんなビターな締めくくりにするなんて。 ということで「わたし、とても気になります。『秋期限定モンブラン事件』が」。 果たして2人の互恵関係はどうなるのか、そして小市民の星を掴むことはできるのか!2006年4月18日読了