野沢 尚 『反乱のボヤージュ』
先日お亡くなりになった野沢尚さんの『反乱のボヤージュ』を読みました。 首都大学のオンボロ弦巻寮に住む坂下薫平。ことあるごとに難癖をつけ、弦巻寮を廃寮しようとする大学側は、弦巻寮の舎監として元警察官の名倉を送り込む。そんななか、寮生たちのまわりではストーカー問題や借金事件などがおきるが。 一言で言ってしまえば青春小説なのですが、ありがちな自分探しや色恋沙汰よりも、「親子関係」というものに力を入れているようです。それは薫平だけでなく、奈生子や麦太についてもいえます。 実は、僕も学生時代に弦巻寮の様な大学の寮で暮らしていました。ご多分に漏れず廃寮問題のようなものもあり、自治権の尊重の確認から始まる大学側との交渉も体験してきました。それだけに、薫平たちがどのように対抗していくのか、とても興味がありました。少し人とは違う読み方でしょうが。 最終的に思ったのは、人間は1人であり、1人ではいられないということ。一致団結しているように思えても、その心の裏には様々なものがあり、団結には温度差がある、といっても人間は孤独にたった一人で生きていくことはできず、誰かを頼ろうとし探している。そんなことを思いました。