色彩を失っても
「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」◆憂鬱だろうがなんだろうが、いや、寧ろ憂鬱なときほど本屋さんは宝の山。ここ一週間、新しい本をたくさん買いました。そのうち何冊かについて自分めも。タイトル買い→「五つの鍵の物語」(太田忠司)鍵が好きなんです。このひと初めて読んだ。ミステリというよりも幻想小説という感じ。ちょっと文章が思わせぶりな感じもするけど、描き出される世界はとても美しい。錆びた金属のような。深海の底でひっそり眠るロザリオのような。意味が分からないな。極彩色でもパステルカラーでもない、濁った色合いの美しさです。そしてとても静謐。近作のタイトルも美しいので今度機会があったら読んでみようと思う。作家買い→「悶絶スパイラル」(三浦しをん)相変わらず抱腹絶倒。尚且つ時にリリカル、時に鋭くはっとさせられる。総じて云うならしをんさんはとても才長けた人だということだ。堂本剛の作詞能力について論じている話が好き。すごい同感。最新小説「仏果を得ず」もとても面白かったです。そのほか→「幻想小品集」(嶽本野ばら)「下妻物語」あたりからは本屋さんでさらっと立ち読みして、「これは」と思わないと買わなくなってしまった野ばらさん。私にとって野ばらさんは「ミシン」「カフェー小品集」「それいぬ」で完結しているのだ。この3冊が私に及ぼした影響は計り知れない。最近では「アラジンと魔法のお買い物」は面白かった。今作は「幻想小品集」というより「倒錯」とか「ゴシック」のくくりなのかなと思う。睡眠薬と心中する男の話が一等好き。そして装丁がとても美しい。黒いカバーに金の箔押。そのほか2→「森茉莉かぶれ」(早川茉莉)ある意味作家買い。森茉莉的な意味で。森茉莉についてのエッセイというか随想を、森茉莉への手紙の形式で書いたもの。面白かった。森茉莉ファンなら「うんうん」と思う感じ。私の中での森茉莉をモチーフに描いた作品の金字塔、笙野頼子の「幽界森娘異聞」には及ばないにせよ(好みの問題。)面白かったです。