|
カテゴリ:本
心はプログラムできるか
書評/IT・Web 人工知能に関する本だなと思って手に取ったら、少し異なる分野の人工生命に関する本だった。ソフトバンク・クリエイティブの新書で軽い気持ちで読んでいたが、ひとつずつ理解して読むのに時間がかかってしまった。いやまだ理解したわけではなく、内容を頭に入れたぐらいにすぎない。 内容は軽くなく、大学か大学院の半期1コマに相当する量ではないだろうか?軽く流しているだけだが、1章ずつ検証していって、そのたびにプログラムを書くような演習があったら、大学院レベルではないだろうか? 私がこの本を語るには私の半生を少し語ることになる。 私も会社に就職して直後だったと思うが、アメリカへ研修へ行ったときにたまたま見つけた本が"Artificial Life"だった。ニューメキシコのサン・ファンで1987年頃に"Artificial Life"の第一回の会議をまとめた本だった。英語で500ページの本だったがむさぼるように読んだ。しまった、僕の進む道はここだったと直感して、それから3年後に大学院に入りなおした。 脳の中でどんなふうに知識や知恵が構築されていくのかが知りたかった。 そうだ!ミンスキーが心の社会という理論というのは正しいように思える。だったら、脳の中の一つ一つの最小の思考因子は単純なことをするだけで、それが生命のように知恵が成長していくに違いないと。まあ発想するのは簡単だが、それのモデルを作ったり証明していくのはとてつもなく大変で、Lispでモデルをつくるにしても時間がかかるだろうなぁと思う。いまでこそGoogle,Sun, Amazonのネットワークコンピュータティングでいけば、シミュレーションも速度に任せることができる(お金はかかるけれど)。 そんなことを考えて、有田先生の門を何度か叩いた。当時は先生は若くて抱えている学生もいなくて気楽に訪問を歓迎してくれた。私は人工生命ではなくて、本当の生命(娘)ができてしまってその道を外れてしまう。先生の名前を聞くのはそれ以来だった。 この本は先生の講義を聞くような感じで、一言一言かみ締めながら読んだら、手に入れてから半年後に読み終えて書評を書くことになってしまいました。
話が逸れてしまいましたが、最初は身近な「人工生命」の話題から始まる。 一番の答えは出るかどうかわからないが、ある程度のよい答えを出すことは可能である。それは蟻が餌を運ぶルートを導き出す方法で解くことができる。蟻はフェロモンを出しながら歩くので、餌を運んでいるうちにだんだんと最適になっていくので、よりよい答えが見つかってくる。蟻自身は答えを知っているわけではない、結果としてそれが答えになるのだ。 本ではそのフェロモンの考え方を発展させて、言語の発展について考察していた。 また生物を進化するのを観察するのは人間が生きている時間では観察できないので、シミュレーションという形で人工生命では進化させることができる。誕生してその子どもが誕生するのを1秒間に何千・何万という単位で繰り返す。その間に、交配をさせて遺伝子の交換をしたり、わざと突然変異を起こさせる。それが環境に適合するかどうかを、条件式で導き、本物の生命のような現象が起きるかどうか見極める。それが生命の歴史として信頼度が高ければ、そのモデルは実社会で生命が数年後どうなるか逆に判断できるんだ。 生命だけでなく、私たち1人1人が生命だとすれば複数の生命から構成される実社会もまた、人工生命のモデルのひとつとして社会を捉えることができる可能性もある。 人間の感情についても、人工生命を応用したよいモデルができるかもしれない。 すべてのことがコンピューターのアルゴリズムで表現できるとは思わないだろう。だけどそれに挑戦しなくては、複雑なことを解明するにはまず第一歩として足をしるすことが大事だ。実際にコンピューターで解明するときのモデルについて触れることができる上ではよい本だと思う。通常のシステム開発ではまず出てこない、コンピューターの使い方について触れる貴重な本のひとつであると思う。 たった200ページ余りの新書だったが、私にとっては深い深い1冊だった。 参考: 有田先生の人工生命ラボ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[本] カテゴリの最新記事
|