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カテゴリ:本
書名:小倉昌男 経営学
発行:日経BP 値段: 1400円+税 ヤマト運輸で宅急便を生み出した前社長が、ご自身の経営について余すところ書き記した本です。 ご自身の経営上の判断を書き記しているので、非常に生々しく伝わってきます。 経営していない私がいうのも差し出がましい気がしますが、すべての社長はこの本を読むべきです。 毎日重大な経営判断をすると思いますが、小倉社長がある状況下でどのような経営判断をしてきたか、それがどうなのかということを深く考えることは大事なことだと思います。事業分野が異なっても、経営に違いはありません。時代で抱えるべき課題も違いますが、いつの時代でも課題はあり、それを乗り越えていくことが大事なんですね。また意気込みであります。 ・宅配便を始めたいきさつ (宅急便はヤマトホールディングスの登録商標なので普通名詞の宅配便と呼びます) 父親から会社を継いだということもありますが、それまでの運送業とは全く違うので新しく事業を起こしたと言えそうでしょう。 このヤマト運輸の状況は、運送会社としては老舗だったが同業が長距離運送を始める中で乗り遅れてしまってマイナーな運送業に落ちぶれていました。たまたまアメリカのニューヨークへ視察にいった時、アメリカの宅配会社UPSが交差点でそれぞれのブロックに1台ずつ止まっているのを見て、「宅配便はいける」と直感で感じます。 まず日本に帰ってきて実態調査をします。直感からそれがビジネスに築き上げるのは難しく、特に全国規模のネットワークをつくることは大変です。つまり、トラックと運転手、ハブスポーク型のネットワークの場所を確保すること。トラック輸送の経営システムをつくりあげることは、私は全く想像がつきません。 多額のお金がかかり、採算に乗るかどうかわかりません。 たぶん著者と同じように日本でも宅配便事業は可能性があるかもといいながら、実際にはスタートできない人はたくさんいたと思います。 僕も20年前に中国行った時に、ヤマト運輸と同じような宅配便を中国全土に広げればいいだろうなと思いましたが、やはり思いつくだけではだめで実際にやった人は大きな会社になりました。 課題は、誰も取り組んだ事業ではないので収益性がわからないという点にあります。アメリカでは通販が普及していて国土は広いので、宅配便の需要はありました。日本は国土が狭く道も狭いので、採算性はあるかどうかというのはわかりかねます。 それを分析して、最後はやってみようと決断したというところが重要だと思います。収益分析のポイントは、 「全体でどれだけの需要があってどれだけのコストで賄えるかわからなかったが、トラック1台のミクロな視点で見ることでなんとか利益が得られるのではないかと思った。」 さらに、 「ただ都市部はトラックの移動範囲が狭く密集しているので利益は出やすいが、地方がどうかと考えた。まず全国規模で配達することが売りになること、物品のながれは地方どおしではなく、都市部と地方の間に発生することが多いことから、十分に賄えると判断した。」 たとえ当初は集積性が悪くても、 「拠点を設けるために多額の投資がいるけれども、その場合は第一にサービス、利益は後から付いてくると確信する。」 Amazon.comのようです。 さらにトラックドライバーを社員にして大切な存在とあつかったことです。 会社で直接お客さんと接するドライバーは会社の顔であるから。一方で、配送センターなどバックオフィス部分は契約社員やアルバイト、下請けに依頼する。 他にも価格設定をわかりやすくしたことなど、参考にするべきことは多いです。 それだけは終わりません。 宅配便をベースに、発展性のあるいろいろなビジネスを始めました。 スキー宅急便、ゴルフ宅急便、クール宅急便。 それぞれ、通常の宅配便では扱えなったモノのサイズ、納品日、品質管理という要素が加わっています。これらの配送は一見簡単なようですが、システム化する場合は難しい面がたくさん出てくるという逸話があります。その解決策を本に書かれているのは面白いですね。 インターネットが普及してさらに通販が拡大したことで、今後も需要は落ちないと思います。 ただ今後ぜひやってほしいのは、通販輸送の効率化です。 通販のコストで輸送費が非常に大きな割合を占めます。 SDメモリーなど小さなものを買っても、送料が800円と製品と同じくらいかかることもあります。いろいろなお店で買ったものをまとめて送ってくれるといいなと思います。送るのは遅くても構いませんから。1週間に1回だけ、いろいろなお店で買ったのをまとめて送ってくれるとか。 いろいろな問題はありますが、利用者の声として聞いてくれるとうれしいな。 最後に経営リーダー10の条件についてまとめておきます。 1. 論理的思考 経営は論理の積み重ね。考えられるべきすべての予測を読む。 2. 時代の風を読む 世の中の流れをつかみ取り、迅速に対応することが肝要。 3. 戦略的思考 戦術レベルではなく大局的に見て進む 4. 攻めの経営 攻めの経営とは需要を作り出すこと。守りに入ったじり貧。競争相手は同業他社とは限らない。 5. 行政に頼らぬ自立の精神 行政の補助金などに頼らない。権力を行使することに喜びを感じる役人の言葉を聞くべきではない。 6. 政治家に頼るな、自助努力あるのみ トラブルがあったときに政治家に頼むとトラブル相手も政治家を立てて、結局お互いの政治家の顔を立てることで中途半端に終わってしまう。正しいことだと思ったら真正面から挑むのがよい。 7. マスコミとの良い関係 社会的な説明責任をもつ。するとマスコミと人々に対して正しいメッセージが届く 8. 明るい性格 ポジティブシンキングですね 9. 身銭を切ること トップは会社の経費ではなく自分の収入から奢る 私も取締役の時は社長のまねをして、収入の1割?は難しかったけれど、奢りました。 10. 高い倫理観 「まごころ」と「思いやり」で事業を営む 全くその通りだと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.09.21 13:58:27
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