ウクライナの栄光は滅びず
自由も然り
【反転総攻撃が開始された】
栄光あれ!
『命の木に対する権利を与えられ、門を通って都に入れるように、自分の衣を洗い清める者は幸いである。犬のような者、魔術を使う者、みだらなことをする者、すべて偽りを好み、また行う者は都の外にいる。』
ヨハネの黙示録22.14
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ブログ短編小説『ザポリージャの森』4
この一連のブログ短編小説の主人公は「俺」である。
「俺」はウクライナ外国人義勇軍に志願し、現在、その分隊長の任にあたっている。だが「俺」は、国籍も年齢も、さらには如何なる想いで外国人義勇兵になったかを明らかにしていない。想像できることではあろうが……。
(ザポリージャ原発)
偽旗作戦の車列は、南に向け林道を時速40kmで進めていた。事前の情報では、この林道には地雷は設置されていないのが分かっていた。ロシア軍の第一防御線脇の林をすり抜け、第二防御線脇の林に差し掛かった時、前方にロシア軍の検問所が見えた。
「サーだが、敵の検問所が見える。騙せるか、それとも騙せないか、それが試される関門だ。分隊長。よろしく」俺のインカムに聞こえる中隊長の声に淀みはなかった。ハムレットの心境は感じたが。その通りだ。なにせ『偽旗作戦』だから。
「サー。了解」俺はそう答え、11人の分隊員にインカムで伝えた。
「車列が停車したら、林に紛れ分散して狙撃態勢だ」
スピードを落とし、中隊長の先頭車がロシア軍検問所前で停車した。検問所には敵のロシア兵が6人いた。中隊長の部下、ネイティブなロシア語を話せるウクライナ兵が、先頭車のハッチを開け身を乗り出した。上空には、切れ目なくウクライナ軍のロケットが南へと飛んでいる。爆発音が轟き、耳をつんざく。
「我々は、第一防御線の第87突撃中隊だ。急遽、メリトポリの司令部から命じられてザポリージャ原発守備隊の増援に向かっている。0600時までに到着しなければならない。大統領閣下、直々の命令だ」
検問のロシア兵たちが、浮足立っているのが見て取れた。ウクライナの反転攻勢が激しさを増しているからだ。
「敵キエフ軍の侵攻は、今どの辺ですか?」ロシア兵軍曹が聞いてきた。
「俺たちのすぐ後ろに来ているよ」ウクライナ兵がそう答えた、その刹那だった。ウクライナ兵が消音拳銃でロシア兵軍曹の眉間に穴を開けた。
後ろの車列から降り、脇の林に展開した俺たち分隊員が、狙撃銃のトリガーを引いた。暗視標準器、消音装置付き狙撃銃で後部から狙い通りに撃った。2人のロシア兵が頭部に2発くらって仰け反った。
土嚢の中に逃げ込んだ敵3人は、中隊長が命じた戦車砲弾を近距離でくらい、土嚢と共に宙に飛び散った。
「これからザポリージャ原発に繋がる幹道に出る。速度を30kmに落とし、悠然と車列をつくれ」中隊長がインカムで皆に伝えた。
「サー」俺は応えた。
この中隊戦車輸送車の中央ハッチの上に、極小の「敵味方識別発信機」を張り付けていた。事前の打ち合わせ通り、ウクライナ・ドローン部隊の「偵察&攻撃」を避けるためである。
ドニプロ川を右方に見ながら、車列を進めていた。あと30分ほどでザポリージャ原発エリアに着く。
前方にロシア軍増援部隊の車列最後部が見えてきた。そこに中隊の車列が近づき、ロシア軍増援部隊の金魚の糞となった。幸いなことにロシア軍最後部は、物資輸送のトラックだったので、その背後に中隊の車列が隠れた。ちなみに、ロシア軍の車列も車のライトは細く絞って、僅かな光線の灯りで走行している。
「敵の車列にロシアの旗が無い。直ちに偽旗を降ろせ」道が大きくカーブした時、ロシア軍の戦闘輸送車列を見た中隊長が命じた。
「サー」後列の皆が応えた。
俺はインカムで伝えた。
「皆、特製弩弓を持て」
「サーより。特製弩弓で敵ロシア軍を混乱させる。愛馬よ」この愛馬は、サー(中隊長)が俺につけた即興の「コード」だった。
「愛馬、了解」俺は即座に応えた。実に馬が合う英国人中隊長だ、と頷いた。
特製弩弓。ボーガンの矢にチタン製の特殊鋼を取り付けている。望遠標準器を装着した矢3本入りの短い弩弓である。7、80mまでは敵ロシア兵の的、ヘルメットを被った頭部を打ち抜くことができる。防弾ベストも射貫く。しかも音もなく。俺たちは全員、特製弩弓を肩からかけた。
東部戦線でも反転攻勢の幕が下りていた。その6時間前に、夜空に飛ばした「ブラックボックス」バルーン1000個がロシア軍占領下のドネツクで、ド派手に白く滝のように降り注ぐ花火を放っていた。鉄製の箱(ボックス)に仕込んだ、その花火のどれも、白燐弾と錯覚する代物である。おまけに花火は地上でも地を這って炸裂していた。起爆装置は、ロシア軍の機関砲弾でありミサイルである。
ロシア軍は混乱を極めていた。そこにウクライナ軍の戦術群が、雪崩れ込んで行った。これが「ブラックボックス作戦」である。
「こちらサーより。愛馬よ。ドンバスで花火大会が成功裏に進んでいる、と連絡があった。総司令部が愛馬に伝えてくれと」
「愛馬より。あの花火大会をサーと一緒に見たかったぜ」
「平和になったら、愛馬と見に行くぞ。色彩豊かな花火をね」
「サー。愛馬も了解」
(つづく)