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相手は旧式の頑丈なセドリックのセダンだった 後ろから猛スピードでぶつかってきた 私の車は完全大破 車軸も折れ 高速回転の独楽となって私を放り出した 極限状態に無音のなかスローモーションで飛び散っていたガラスの飛礫 奇跡は私を生きながらえさせた 頭だけはどこにもぶつからず縁石にもあたらず着地した 裂けたジーンズ 裂傷から伝わりしたたり落ちる深紅の雫 呆然としたまま病院へ運ばれ 現場検証に立ち合い 相手は泥酔で車をぶっ飛ばしていたことが判明した わたしが帰途についたのは午前二時 事故の惨状とはうらはらに 自分の足で帰宅できた 一人暮らしの静寂のなか 包帯に巻かれたままの頭 腕 足 研ぎ澄まされてしまった意識が 事故の映像を再現する 止まらない 涙が止まらない 生きてる 涙 うれしくて 流れた リアルな痛みが 自然にそうさせていた 疲れを呼び覚ますまで 涙が流れ続けた そんな状況で うれし泣きをした 生きているだけで幸せだ って本気で思っている バカだから 面接で生き甲斐を聞かれたときに それを言ってしまった 「生きてるだけで十分幸せです」って 面接官はあっけにとられて なんだこのバカって目で見てた あの人には一生分からないかもしれない 2006-08-28 17:48:44 長いおつきあいのお友達は一度 この話を読んでいただいてます 一度克明に書いた話は消してしまいましたが、私を支えている原点の一つなので また、書いてしまいました ずいぶん昔の話です もう傷はとうに癒えて酒を飲んでも傷跡が赤く浮き出ることはなくなりました でもあの追突の瞬間「終わりだ!これで終わりだ!」って最後を覚悟した衝撃は忘れません。 2006-08-28 21:57:40 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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