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May 9, 2015
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「信玄の戦略」(111章)

(三方ケ原の合戦 3)


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 家康が掌に汗を滲ませ武田勢の動静を注視している。

 馬蹄の音を響かせ物見の武者が駆け寄ってきた。

「申しあげます。敵はこの台地の北端に陣を構え押し寄せて参ります」

 絶叫するような声で武田勢の動きを報告した。

「祝田を背に陣を構えたと申すか?」  

 かの地の背後には深い崖がある。追い詰め逆落とすれば勝機はある。

 そこは犀ケ崖という地名で、家康の脳裡に一瞬勝利の望みが湧いた。

「各陣営に伝えよ。これより合戦に入る、鉄砲隊の射撃を合図に鶴翼の陣

で武田勢を押し詰めるのじゃ」

「鶴翼の陣形にございますか?」

 物見の武者が不審顔で訊ねた。

 鶴翼の陣とは大軍のみが取りえる陣形である。

 徳川勢の兵力は武田の三分の一に満たないのだ。

 小勢の軍勢が鶴翼の陣形で合戦に及ぶなどは聞いた例がなかったのだ。

「二度と云わせるな、鶴翼の陣形で臨むと各将に念を押すのじゃ」

 家康が口汚く再度、念を押した。

「畏まりました」

 物見の武者が後方の味方の陣を目差して駆け去った。

 家康にとり、この合戦は賭けであった。絹糸のように細い軍勢で以って

三倍の武田勢を包囲し、三方ケ原台地の後方に押し詰める。

 当然、武田勢は魚鱗の陣形で対応する筈である。

 まさに家康にとり、これ以上、心細い合戦を行うなど考えもしなかった。

 だが家康に残った戦術は、どう考えてもこの戦術しかないのだ。

 信玄は根洗いの松の本陣の前の、大木の翳に寒風を避けていた。

 彼は諏訪法性の甲冑と緋の法衣姿で、寒さよけに熊の羽織りを纏って床几

に腰を据えている。

 地鳴りような歓声と鬨の声が湧き揚がった、両軍の先鋒隊が接近したのだ。

 徳川勢の将達は家康の下知で絹糸のように軍勢を薄く配置し、鶴翼の陣形で

臨んでいた。小勢ゆえ、その戦術は悲壮極まる光景であった。

 一箇所でも陣形が破られるなら、この合戦の帰趨は完全な敗北である。

「敵勢に包囲網を破られては成らぬぞ」

 徳川勢の将達は配下に厳命していたが、彼等にもどこまで通用するのか

分からぬ状況であった。

 徳川勢、一千三百名の将兵を率いた石川数正と、三千名を擁する武田の

先鋒、小山田信茂の軍勢との激闘の幕があけた。

「鉄砲隊、前進せよ」

 石川数正が塁代の甲冑に纏い、鞍上から塩辛声で下知を発した。

 それを合図に石川勢の鉄砲足軽が火縄銃を構え膝を地面につけた。

 対する小山田信茂の采配が降られ、二~三百名の軍兵が姿を現した。

 全員が胴丸のみを着け、腰に小刀と小袋をぶら下げた異様な一団である。

「なんじゃ」

 石川勢の鉄砲隊が不審声を発した。

 その一団が俊敏に散開し、猛烈な勢いで石川勢の鉄砲隊に迫ってきた。

 彼等こそが郷人原衆と呼ばれる、投石隊の礫の名人達であった。

 投石隊の接近で石川勢の鉄砲の火蓋がきられた。

「ごうー」

 白煙と銃声の轟く中、郷人原衆は一斉に地面に躰を伏せた。

 銃弾が彼等の頭上を通過するや、一斉に立ち上がり手の礫を投石した。

「あっ」

「痛い」

 石川勢の鉄砲足軽が礫を顔面や肩に受け、悲鳴をあげて苦悶している。

 致命傷には成らぬが、その威力は侮れない。

 郷人原衆は小袋の石を投げ終り、一斉に後方に身を潜めた。

「掛かれや」

 小山田信茂が見逃さず、攻撃の命を発し、自ら先頭で石川勢に攻め寄った。

 二倍以上の兵力をもつ、小山田勢が押し気味に戦闘を続けている。

 長柄槍隊が突撃し、血刀を振り回す軍兵と軍馬が狂奔する。

 味方の不利を悟った右翼の酒井忠次と、左翼の本多平八郎と織田の三将の

勢が、小山田勢を押し囲むように猛烈な攻撃をはじめた。

 芋を洗うような混戦の中、小山田信茂勢のみで徳川勢と渡り合っている。

 他勢は、その合戦の様子を静まり返って見つめている。

 小山田勢は徐々ではあるが、巧妙に軍勢を後方に引下げている。

「敵は怯(ひる)んだ、押し返せ」  

 本多平八郎が愛用の槍を抱え、本多勢が猪突猛進した。

 信玄の本陣から、法螺貝が勁烈な音を響かせた。

 同時に静観していた馬場美濃守と高坂弾正の勢が、左右から徳川勢を押し

包むように合戦に参加した。

 流石に武田家の誇る歴戦の両将だけはある。

 一気に徳川勢を翻弄し、将兵が剽悍な勢いで本多勢を蹴散らしている。

「怯むな」  

 家康も自ら合戦に参加し、後詰の大久保、内藤、鳥居、榊原勢が三河勢の

意地をみせ馬場、高坂勢めがけ雄叫びをあげ殺到した。

 徳川、織田の連合軍は全てが合戦に参加したのだ。

 まさに阿鼻叫喚の呈をようし、両軍の将兵が死力をつくして戦っている。

 一旦、引いた小山田勢が息を吹き返し、再び攻めに転じた。

 徳川勢も果敢に信玄の本陣を目指しているが、三倍の大軍の壁に遮られ

苦戦に陥った。押しても引いても、まるで硬い壁のように跳ね返される。

 武田の三将は互いに連携を取り、大きく戦線を広げ徳川勢を包囲しはじめた。

 徳川勢は全軍が戦線に投入され、控えの兵力はないが、武田勢の半数以上は

控えに廻り、合戦の帰趨を見つめ動こうとはしない。

 本陣の信玄は百足衆の報告で全てを掌握している。

「鉄砲を放て」  

 傍らに控えていた鉄砲足軽の火縄銃が轟音を響かせた。

 馬場勢と高坂勢が一斉に軍を引き、小山田勢も戦線から離脱を図っている。

 徳川勢が不審に感じた時、天地が蠢動した。地面が揺れ動く馬蹄の音である。

 満を持していた武田勝頼と、甘利昌忠の率いる騎馬武者が、雄叫びをあげ、

左右から突風のような突撃を敢行した。

 それは最早、合戦ではなく殺戮場であった。血が飛沫、兵が転がり、軍馬が

斃れ、至る所から苦痛と悲鳴、嘶きが起こっている。

 そんな中、武田騎馬隊が縦横に駆けまわり、徳川勢を突き崩し追い廻している。

 家康は先陣で愛用の槍を捨て太刀で阿修羅のように奮戦していた。  

「殿っ、お引き下され」

 榊原康正と大久保忠世が駆けより、無理やり家康を鞍上に乗せた。

「まだ負けてはおらぬ」  

 家康が血塗れた太刀を振り廻し、猛禽のような眼で戦場を見廻している。

 周囲は最早、絶望的な情況となっていた。

 鶴翼の陣形はずたずた寸断されている。

「本多殿と石川殿等が兵を収容しております。一時も早く城にご帰還下され」

 榊原康正が襲い来る騎馬武者を大身槍で突き伏、叫んだ。  

「ご免」  

 何か言わんとした家康を無視し、大久保忠世が槍の柄で馬の尻を叩いた。

 馬が狂奔し戦場から駆けだした。

「織田の将、平手汎秀(ひろひで)討ち取ったり」

 戦場から勝ち名乗りがあがっている。

 この一戦で徳川、織田の連合軍は完膚なく破れさった。

「わっー」 

 突然、戦場の一角から喚声が沸き、武田の誇る最強の軍勢赤備えが、

家康の逃げ去った方向に向かい疾走をはじめた。

 先頭は山県三郎兵衛が、自慢の朱柄の大身槍を小脇としている。

 三方ケ原合戦は一刻(二時間)ほどで終った。厚雲の間から真っ赤な夕陽が

戦場を照らし出し、折れた槍や旗指物が散乱し、将兵の死骸や死にきれない

負傷者や、大刀や槍で傷ついた軍馬が無残な姿を晒している。

 家康は馬上で生まれてはじめて恐怖を知った。

 あたりは逃げ惑う兵が充満している。

 突然、兵等が恐怖の声をあげ街道から逃げ散った。

 馬蹄の音か迫ってくる、後方をふり向いた家康は声を飲み込んだ。

 武田家最強の赤備えの一隊が、追いすがってくる様が眼に入った。

 家康は不覚にも、鞍壺に脱糞した事も気付かなかったと言う。

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Last updated  May 9, 2015 03:24:13 PM
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