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満天の星

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Nov 12, 2004
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カテゴリ:恋歌1
ああ、大和にしあらましかば

今神無月、
うは葉散り透く神無備(かみなび)の森の小路を、
あかつき露に髪ぬれて、往きこそかよへ、
斑鳩(いかるが)へ。平群(へぐり)のおほ野高草の
黄金の海とゆらゆる日、
塵居の窓のうは白み日ざしの淡(あは)に、
いにし代の珍(うづ)の御経(みきょう)の黄金文字、
百済(くだら)緒琴に、斎ひ瓮(いほひべ)に、
彩画(だみえ)の壁に見ぞ恍(ほ)くる柱がくれのたたずまひ、
常花(とこばな)かざす芸の宮、斎殿(いみどの)深に、
焚きくゆる香ぞ、さながらの八塩折(やしおおり)
美酒(うまき)の甕(みか)のまよはしに、
さこそは酔はめ。
          [ああ大和にしあらましかば]より。

ああ、大和では今10月---

木の葉が散りだした神々の山の森の小径を、
朝露に髪を濡らしながら、歩いて斑鳩へ行こう。
平群の野原のすすきは黄金色の海となり、
その上には太陽がゆらゆらと揺れているだろう。

窓越しに差し込む薄い日射しの下で、
古代の珍しい経典の黄金文字、
百済伝来の琴、斎檀の酒器、そして壁面の仏画、
柱越しで、それらのたたずまいに見とれたいものだ。
飾り花の絶えない学問所や斎殿の奥深くでは、
焚き込められた薫香が、
まるで瓶から流れ出る芳醇な美酒の香りのようだ。
さあ、その香りに酔おうではないか。
      三好達治「詩を読む人のために」(岩波文庫)
 
予定では明日、大和へ旅立つはずだった。
結局諸事情でつぶれたけれど、薄田泣菫のこの詩のように、
森の小径をたどって斑鳩へ行きたかった。

季節は霜月に替わったけど、情景は同じだったろう・・・
いつの日にか、旅してみたい いにしえの大和へ





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最終更新日  Nov 12, 2004 09:17:28 PM
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